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最新医療~夕刊からだ面より

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潰瘍性大腸炎への便移植…腸内細菌の乱れ抑制

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 下痢を繰り返す潰瘍性大腸炎など、腸の重い病気の人に、健康な人の便を移植する臨床研究が国内で始まっている。腸内細菌のバランスの乱れが病気を引き起こすとみられており、細菌の宝庫である便でバランスを整えようという狙いだ。



国内でも臨床研究 ◆ 提供者は2親等以内

 潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜の表面がただれたり崩れたりする病気で、激しい下痢や腹痛を引き起こす。下痢は下血を伴うこともある。医療費を国が負担する難病の一つだ。

 患者数は14万人以上で、年々増加。20~30歳代に発症することが多い。慢性化するため、仕事や結婚、出産など様々な面に影響する。原因は不明だが、最近の研究で腸内細菌が深く関わっていることが明らかになってきた。

 人間の腸内には1000種類、100兆個以上の細菌がすんでいる。これらは腸管から栄養を吸収したり、病原体の感染を防いだりと重要な働きをしている。

 しかし、潰瘍性大腸炎など腸の病気の患者は、細菌の種類が少なかったり、個数が少なかったりする。こうした腸内細菌のバランスの乱れは、食生活の乱れや運動不足、ストレス、抗生剤の多用などが原因とみられている。

 便移植は、こうした腸の病気の患者に、健康な人の便を移植する治療法だ。便は細菌の宝庫。詳しい理由は分かっていないが、細菌のバランスの整った健康な人の便が、細菌の乱れを抑える可能性があるという。

 オランダの研究グループが昨年、米医学誌に発表した論文によると、下痢などを引き起こす菌による感染症の患者について、抗生剤による従来の治療は2~3割の人にしか効かなかったのに対し、便移植は9割以上に効果があったという。これを受け、国内でも便移植の臨床研究が動き出した。最初に始めたのは慶応大(東京都新宿区)だ。

 3月下旬、1例目となる潰瘍性大腸炎の40歳代の男性に便移植を行った。男性は従来の治療を試したが効果がなく、繰り返す下痢に悩まされていた。

 方法は単純。健康な人の大便を生理食塩水と混ぜ、フィルターでろかする。それを注射器に入れ、内視鏡で大腸の奥に注入する。便の提供者は配偶者か、2親等以内の家族に限定する。提供者の便に有害な病原体が含まれている恐れもあるため、移植する便の事前の検査は入念に行われる。

 研究の対象は、潰瘍性大腸炎のほか、過敏性腸症候群、難治性感染症、腸管ベーチェット病の患者計45人。慶大消化器内科教授の金井隆典さんは「便100グラムには乳酸菌飲料200本分の細菌が含まれている。今後の研究で、便に含まれる菌と病気の関係がわかれば、画期的な治療につながるかもしれない」と話す。

 順天堂大(東京都文京区)も6月から臨床研究を始めた。対象は潰瘍性大腸炎の患者計30人。便移植の前に2週間、3種類の抗生剤を投与するのが同大の特徴だ。

 こうした治療法は現在、効果や安全性を確かめている段階で、実際に治療の現場で使えるようになるかどうかは未知数だ。順天堂大消化器内科助教の石川大さんは「現状では過度に期待するべきではないが、多くの患者の福音になる可能性を秘めている」と話す。(加納昭彦)

 
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