文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

原記者の「医療・福祉のツボ」

コラム

医療のかかり方(17)病院には、危険がいっぱい

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 病院は、病気になった人が治療を受けたり、療養したりする場所です。つまり、体や心の状態が良くなるようにすること、かりに回復が見込めなくても、できるだけ楽な状態にすることが目的です。

 でも、入院したから安心、と考えていたら、大間違い。病院にいるせいで不幸な事態が起きることがけっこうあるのです。

 一つは、医療事故です。患者の取り違え、薬の処方の間違い、実際に用いるときの薬の種類や量の間違い、手術中や検査中のトラブル、輸血ミスなど、さまざま。ベッドや階段からの転落、廊下やトイレでの転倒、食べ物をノドに詰める事故もしばしば起きます。

 もう一つは、院内感染です。病原体に感染し、ときには重い病状になったり、死亡したりします。病院内で感染が起きやすいのは、いくつかの理由があります。

 まず、抵抗力の落ちている患者が大勢いることです。結核やインフルエンザのようにうつる病気もあれば、「日和見感染」もあります。人の体の内外にも、水回りなど環境の中にも、たくさんの微生物がいて、元気な人なら病気を起こさない微生物でも、体の弱った患者には重い症状を引き起こす。それが「日和見感染」です。

 また、抗菌薬を治療にたくさん使う病院では、その系統の薬の効かない「薬剤耐性菌」が増えます。複数のタイプの薬が効かない「多剤耐性菌」も増えています。

 医療器具をよく用いることも一因です。点滴の針、尿路に入れるカテーテル、人工呼吸器、内視鏡など、管や器具を体に入れることが多く、そこから病原体が侵入するのです。


患者が自分の身を守る

 そういうわけで、あえて刺激的に言いましょう。

 「病院は、危ない所だ」と考えたほうがいいのです。

 この十数年で、医療安全対策や院内感染防止対策は、ずいぶん進みました。それでもまだ、あちこちの病院で起きています。対策への取り組みの程度は病院によって差があるし、たとえ医療スタッフが努力していても、完全には防げないのです。

 だから、患者自身が自分の安全を守る、という気構えを持ちましょう。

 具体的に実行するとよいのは、次のようなことです。


・入院中は他の患者と取り違えられないよう、手首に個人識別バンドをつけてもらう

・同姓同名の入院患者がいないか、看護師に尋ねる(同姓同名は意外にある)

・手術、検査、投薬などの前には、自分の名前をフルネームで積極的に名乗る

・血液型、アレルギー、持病は、医師、薬剤師、看護師に繰り返し、伝えておく

・点滴する前や内服薬が出た時は、薬の種類や使う目的を毎回、スタッフに確かめる

・手術を受ける時は執刀医を確かめ、麻酔科医の問診を受ける

・院内感染を防ぐ基本になる手洗いを、スタッフがきちんとやっているか観察する

・不具合なことや疑問があれば、遠慮せずに伝える



 患者側が工夫することによって、危険を減らせるわけです。

 医師や看護師は大勢の患者を扱っていて、多忙です。だから声をかけるのを遠慮する患者も多いのですが、いつもおとなしくて遠慮がちにしている患者には、スタッフの注意力が下がる可能性があります。文句ばかり言うのはいけないけれど、気になることはいちいち確かめ、わからない点があれば何回でも質問する。「この患者さんには気を抜いたらいけないな」と感じてもらうことも、安全対策になります。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

原昌平20140903_300

原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。社会福祉学修士。大阪府立大学大学院客員研究員。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

原記者の「医療・福祉のツボ」の一覧を見る

最新記事