百寿者こぼれ話
からだコラム
[百寿者こぼれ話]余命に関係「フレイル」とは
生活習慣病にならなければ、元気で100歳を迎えられるでしょうか? 私たちはそれだけでは不十分だと考えています。
100歳以降の余命に何が関係しているのかを調べました。病気の有無、コレステロール値、血糖値などは関係ありませんでした。余命が短かったのは、元気が良くなく、栄養状態が悪く、炎症反応が高く、認知機能が低い人でした(逆の人が長生きでした)。このような人を「虚弱」、または「フレイル」と呼び、今、老年医学でホットなテーマになっています。
フレイルという言葉には、なじみがないと思います。ちょっと難しい言い方になりますが、「加齢により生理的予備能が低下して、様々なストレスに弱くなり、健康問題を起こしやすい状態」ということです。
従来の「病気により障害が起こる」という考えとは異なり、老年医学に特有の考えです。いわゆる昔の年寄りのイメージ。志村けんさんがコントで演じるおばあさんを思い浮かべてください。
体力低下や筋力低下、行動が遅くなる、疲れやすい、意図しない体重低下――などの症状があればフレイルと診断されます。
残念ながら、どうしてフレイルになるのか、どうしたらフレイルを予防できるのかは、よく分かっていません。私たちは、炎症反応と脂肪組織の健康度もフレイルに関与していると考えています。また、運動(筋力をつける、速く歩く)や、栄養を保つことなどが、予防に有用であるという報告があります。
日本老年医学会では、身体的なものだけでなく、精神的、社会的にもフレイルな状態があり、今後、研究していく必要があると提唱しています。フレイルに注目してください。(広瀬信義・慶応大特別招聘教授)
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