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腰椎椎間板ヘルニア 内視鏡手術PED法…出血少なく 入院1泊

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 腰痛を引き起こす腰椎椎間板ヘルニアの内視鏡手術で、傷口が1センチ以下と小さく、1泊2日の入院で済む「PEDペ ド法」(経皮的内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術)が注目されている。高度な技術と経験が求められ、日本整形外科学会は今年度から、PED法を行う医師の技術認定制度を設け、安全な手技の普及に乗り出した。



安全な手技普及狙い 医師の技術認定制度

 腰椎椎間板ヘルニアは、背骨の骨をつなぐ軟骨(椎間板)の内側から「髄核」と呼ばれるゲル状の組織が飛び出す病気。周辺の神経が圧迫されて炎症を起こし、腰や足に痛みが出る。20~40歳代に目立ち、生まれつきの体質や腰を酷使する職業・スポーツなどが主な原因とみられる。

 診断後はまず、安静にし、痛み止めの服用や患部に局所麻酔薬を注入する「神経ブロック」を行う。7~8割の患者は、飛び出た髄核が2~3か月で縮小するなどして痛みが引き、手術を避けられる。痛みが治まった後は周辺の筋肉をほぐす運動療法も効果がある。

 しかし、薬の効果がみられず、痛みが長引くケースでは手術が検討される。排尿障害や、足に力が入らない脱力症状が出る場合は、緊急手術となる。

 手術は、背中を3~4センチ切開し、飛び出た髄核を取り出す手法のほか、顕微鏡や内視鏡を使い、体への負担が小さい「低侵襲手術」も普及。傷の大きさや痛み、入院日数を減らそうとする傾向が強まっている。

 一般的な腰椎ヘルニアの低侵襲内視鏡手術は、全身麻酔下で、直径2センチ弱の内視鏡を背中から挿入。骨の一部を削って器具を進め、飛び出た髄核を取り出す。手術翌日には歩け、入院期間は約1週間。神経をより分ける作業や手術でできた血腫の影響で、約2%の患者の足にまひが出たり痛みが増したりする。

 近年、「超低侵襲」として普及が期待されているのがPED法だ。2003年、帝京大医学部付属溝口病院(川崎市)の整形外科教授、出沢明さんが導入した。

 背中から直径6~8ミリの管を挿入し、超小型カメラ付きの内視鏡を通し、飛び出た髄核を摘出する。神経を避けて腰椎の骨と骨の間に管を通すため、骨を削ることはほとんどない。

 生理食塩水を注入しながら器具を進める新たな手法により、水圧で出血を微量に抑え込める。局所麻酔で行い、しびれなどの違和感がないか患者に尋ねながら手術でき、合併症のリスクも減らせる。術後は数時間で歩け、翌日には退院できる。保険がきく治療だ。約2%の患者に術後、足の痛みが出るが、通常は数週間以内に治まるという。

 PED法では、内視鏡の管が細く、内部を鮮明に見られない環境で、神経組織と、酷似した近くの靱帯組織を区別する必要がある。器具を通して伝わる感覚で判断するなど、高度な技術と経験が求められる。

 日本整形外科学会の認定医には初年度、実際の手術のビデオ審査などを経て11人が合格。脳神経外科の分野では3人の認定医がおり、今後、さらに増やす方針だ。出沢さんは「PED法を確実に行える医師は全国でも限られている。適切な研修と経験を積んだ医師のもとで手術を受けるのが望ましい」と助言する。(佐々木栄)

PED=Percutaneous Endoscopic Discectomy

 
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