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けいれん性発声障害…のどの筋肉のジストニア

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 発声中にのどの筋肉がけいれんしてしまい、声が詰まったり途切れたりする「けいれん性発声障害」という病気があります。原因不明の神経の病気ですが、見た目にはわからないことから、ストレスや緊張のせいと誤解されることも多いようです。

 ある女性患者は、喉頭がんを疑われたり、精神科などにもかかったりしたが診断がつかず、医療機関を何か所もさまよったといいます。また、別の患者は「ストレスのせい」などと周囲に言われ、病院に行っても相手にされないのではと、受診すらできずに1人で悩んでいたとのことでした。

 会話中に、相手から「えっ」と聞き返される度、「言ってることが伝わっていないのではないか」と不安になり、やがてしゃべること自体がおっくうになって、精神的にも落ち込んでしまったと打ち明ける患者もいます。

 この病気は、原因不明の中枢神経の障害でどの筋肉に不随意運動が起きるので「のどのジストニア」とも呼ばれます。20~30代の若い女性に多く発症するのが特徴です。

 治療には、筋肉の緊張を和らげるボツリヌス毒素製剤の注射がありますが、日本ではこの病気には承認されていません。症状が重い場合には、のどの部分を切開して声を出しやすくする手術を行うこともあります。

 発声障害には、けいれん性発声障害以外にも様々な種類があります。のどにできた腫瘍が原因の場合もありますし、心理的な要因のこともあります。腫瘍を取り除く治療や、言語聴覚士による発声指導によって改善がみられれば、これらの病気が原因と言えます。裏返せば、発声指導によっても改善がみられない場合は、ストレスなどが原因ではなく、不随意運動であるけいれん性発声障害が疑われることになります。

 福岡山王病院(福岡市早良区)に今年7月、音声・嚥下えんげ障害のセンターを開設した梅崎俊郎・国際医療福祉大教授は「正しく診断されずに『心の病』などとされている現状が、患者をさらに苦しめているという問題がある」と、この病気への理解を訴えています。(田村良彦)


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