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大衆演劇…客席と一体 人情ショー

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 家族を軸にした「一座」が、全国を旅しながら時代劇や舞踊ショーを見せる大衆演劇。大阪では専用劇場も増え、人気が高い。シニア3人が新世界の朝日劇場に、若き座長を訪ねた。

座長の橘大五郎さん(左から2人目)を囲んで感想を伝える(右から)杉本さん、高山さん、深谷さん(左端、大阪市浪速区の朝日劇場前で)=川崎公太撮影

 大阪市旭区の高山伸子さん(59)、同市大正区の杉本福蔵さん(64)、三重県名張市の深谷清貴さん(62)。3人は観劇をきっかけに関心を持ったという。

 今月29日まで公演中の大分県の「橘劇団」座長、橘大五郎さん(27)が、3人を楽屋に迎え入れてくれた。素顔にTシャツ、短パン姿。祖父母が旗揚げして51年になる劇団で育ち、叔父で総座長の橘菊太郎さん(52)を継ぎ、三代目座長として26人の団員を率いる。映画「座頭市」(北野武監督)に、市と出会う芸者役として出演し、注目を集めた。

 衣装や舞台道具であふれた楽屋は、団員が赤ちゃんのおしめを替え、ペットの犬と猫が走り回り、生活感に満ちている。「荷物の量は?」。杉本さんの疑問に、大五郎さんは「10トントラック2台と4トン1台。移動が大変で」と答えた。

 劇団は年間、全国を巡り、1か所で1か月間、昼夜2回公演(1回約3時間)をこなし、次の地へ移る。舞台が“日常”だけに、様々なことが起きる。「腹痛の時はどうするんですか」。高山さんが尋ねると、大五郎さんはすかさず返した。「そんな時は即興で場をつなぎ、トイレに駆け込み、すぐ戻ります」。一同は「へえー」と感心した。

 座長の重責を担う大五郎さんは独身。「嫁さんを探してます」と明かされると、高山さんは「私の息子も同年代。親しみがわきますね」。場が一気に和んだ。

 深谷さんは予習の成果をぶつけてみた。「毎日、出し物を変えると聞きます。お芝居の演目はいくつありますか」。大五郎さんは「80本ほど。話の本筋は決まっていますが、台本はありません。その日の朝稽古だけで、すぐお芝居です。当日の客席を見て急に演目を変えることも度々ですよ」。深谷さんは感心しきりだ。

 公演で、大五郎さんが立役たちやく(男役)で花道に現れた。200席を埋めた観客から「待ってました、大ちゃん!」と掛け声と拍手。座長は流し目で応えた。人情劇『妻恋宿の留八』では、母の小月おづききよみさんと親子で情感豊かに演じ、舞踊ショーの最後には女形に。ヒット曲「川の流れのように」で優雅に舞い、「曲に託す思いが伝わってきました」と杉本さんを感動させた。

 役者たちのあうんの呼吸に、舞台と客席が一体となる臨場感。「座長としての夢は何ですか」。人情味あふれる大衆演劇に触れた3人の興味は尽きないようだった。(満田育子)

情感胸に染みる

 高山さん「家族的な温かさや、座長さん、役者さんとふれ合える大衆演劇の魅力がよくわかりました。これを機会に息子と一緒にまた見に来ます」

 杉本さん「大五郎さんから大衆演劇への熱意をうかがい、舞台で観客の反応を見ながら楽しそうにお芝居をする様子を、すがすがしく思いました」

 深谷さん「母の付き添いで大衆演劇を見始めましたが、改めて人情劇や情感のこもった舞踊が人生経験を積んだシニアの胸に染みると実感しました」

都心にも新設

 大衆演劇は明治に歌舞伎の影響を受けて生まれた。公演先は温泉街のホテルやレジャー施設から、ここ3年の間には都心の映画館などを改装した専用の劇場も開設され、客層は若者や家族連れにも広がっている。

 大衆演劇「公式」総合情報サイト(http://0481.jp/)によると、全国の130以上の劇団が約130か所を公演にまわっている。大阪では梅田や京橋に新設された専用劇場など19か所に上る。兵庫県は7か所、京都にも3か所ある。大阪市浪速区の朝日劇場は104年の歴史を持ち、全国の人気劇団が公演。昼の部は正午、夜の部は午後5時開演。大人1800円、小学生以下1000円など。

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