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精神疾患名 どう変わる?…「障害」避け「症」に置き換え

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 米国精神医学会が作成し、世界で広く用いられる精神疾患の診断基準「DSM◎」が昨年改定されたことを受け、日本精神神経学会は今年5月、改定に対応した日本語病名を発表しました。「アルコール依存症」などの病名がなくなるなど、多くの変更がありました。

米基準改定受け

 ――これまでよく使われてきた病名をなぜ変更するのですか。

 「精神疾患の病名は過去にも変更されています。2002年には『精神分裂病』が『統合失調症』に変わりました。以前の病名に患者を蔑視するニュアンスがあり、患者や家族から改名の要望が強く上がっていたためで、日本精神神経学会が新病名を決めました。国などはこの変更を受けて、公的文書をすぐに改め、新病名が社会に広まりました」

 「しかし、今回の変更は経緯が異なります。国内の患者や家族の声を受けた変更というよりも、米国の診断基準の改定に合わせた変更だからです。日本語での病名は、同学会など精神疾患の関連学会が訳し方を決めました」

消える「依存」

 ――最も大きな変更があった病気は何ですか。

 「コミュニケーションや対人関係の問題が表れる『発達障害』は、名称や分類が大きく変わりました。以前のDSMには『広汎性発達障害』という病名があり、症状の程度や出方によって『自閉性障害』『アスペルガー障害』『特定不能の広汎性発達障害』などに細分化していました。米国の改定版ではこうした細分化を行わず、『自閉スペクトラム症』で一括しました。細分化するよりも、一続きの病気として捉えるほうが実態に近いとの判断があったためです」

 「『アルコール依存』など、依存症を表す英語『dependence』が消えたことも注目されます。しかし、依存症という言葉は日常的に使われており、『インターネット依存症』などの言葉も新たに生まれているので、戸惑いの声が上がっています」

過剰診断の懸念も

 ――日本の学会が日本語訳を作る際に病名を変更したものもあるそうですね。

 「例えば、『不安障害』の英語病名には変更はありませんが、日本語訳は『不安症』になりました。同様に『パニック障害』が『パニック症』、『強迫性障害』が『強迫症』と変わりました。同学会副理事長の神庭重信さんは、『障害と付くと治らない病気というイメージが強まるため、診断時に衝撃を受ける人も少なくない。個々の病気の実情を考慮しながら、必要と判断したものは可能な限り、症に置き換えた』としています」

 「一方で懸念もあります。不安感や強迫的な思いは誰でも抱くので、それだけで病気とは言えません。これが過剰になり、社会生活に支障が出た状態が精神疾患です。病名から障害をなくすと『自然に生じる不安感などまで病気と過剰診断されるのではないか』と心配する声が上がっています。神庭さんは『安易な診断をしないように、医師に求めていく』と説明しています」

 ――今後は新病名を使わなければならないのですか。

 「以前の病名でも問題はありません。医療機関などでの公的文書で使われる標準的な病名は、世界保健機関の分類に基づいて決められており、今回の変更がすぐに反映されるわけではありません」

 「しかし、世界保健機関の分類は3年後に改定が予定され、精神疾患についてはDSMとすり合わせが行われます。そのため今回の日本語病名の多くが、標準的な病名として採用される可能性が高いと考えられます。新病名に疑問があれば、関連学会などに意見を伝えたほうがよいでしょう。神庭さんは『再検討を求める声があれば、きちんと対応したい』と話しています」(佐藤光展)

 ◎DSM=Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders

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