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深化する医療

メニエール病 早期発見…内耳の変形 CT画像診断

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内耳の画像を見せながら、メニエール病患者(左)に症状を説明する山根さん(大阪市立大病院で)=長沖真未撮影

 国の特定疾患(難病)に指定されているメニエール病は、耳の奥にある内耳の障害によって激しいめまいや難聴が起き、日常生活に支障を来す。なぜ発症するのかよくわかっておらず、単なるめまいや耳鳴りなどと判断しているうちに、病状が悪化するケースもある。

 大阪市立大病院(大阪市阿倍野区)では、最新のコンピューター断層撮影法(CT)による立体的な画像診断法を導入し、早期発見に力を入れている。

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 内耳は、▽カタツムリのような形をしていて、音を感じる「蝸牛かぎゅう」▽重力や加速度を感じる「前庭」▽体の回転を感じる「三半規管」――などの器官で構成される。各器官の内部にはリンパ液が流れている。

 同病院耳鼻咽喉科教授の山根英雄(64)は、メニエール病患者250人以上のCT画像を分析し、患者の内耳では、「球形のう」と呼ばれる前庭の一部と、蝸牛とをつなぐ細い管が、太く変形しているという特徴を発見した。

 この変形は、球形のうの内壁にくっついている炭酸カルシウムの結晶(耳石)の一部が剥がれて管が詰まることで生じる、と山根は考えている。その結果、内耳に水ぶくれができ、メニエール病を引き起こすとみられる。

 山根はこうしたデータをもとに、前庭などの形状変化で病態を判断する方法を確立。2006年以降、患者の診断に活用している。「病気の進行状況やめまいが続く可能性などがわかるので、生活改善指導や、薬物投与などの治療法を適切に選択できる」。内耳の構造に応じた特殊な解析方法が必要なこともあって、この病気の画像診断は今のところ、同病院でしか行われていないという。

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 「正常な右耳に比べて、ここが完全に詰まっています。リンパ液が流れていないということです」。先月下旬、山根は兵庫県内の男性(56)に内耳のCT画像を見せながら、球形のうの周辺部分を指して病状を説明した。

 「ただ、めまいに関わる器官も詰まって機能しにくくなっている。めまいはもう起こらない可能性が高いでしょう」と話すと、男性は安堵あんどの表情を浮かべた。

 男性は08年9月のある日、天井がグルグル回るめまいに襲われ、左耳に大きなブザーのような音が聞こえる耳鳴りも生じた。音が聞こえにくくなり、嘔吐おうとも繰り返した。3時間後には治まったものの、その後も月に2~3回、同じ症状が出た。会社でめまいが起きると、半日は医務室で動けなかった。

 「自分は一体、何の病気なのだろうか」。複数の病院を訪ねたがはっきりせず、めまい専用の薬を処方されるだけの時もあった。10年4月に山根の画像診断を受けた結果、ようやくメニエール病とわかった。

 男性は山根の指導のもと、回復に有効とされる血行改善のための軽い運動を続けた。現在はめまいや耳鳴りがほぼ改善し、「画像で病状がちゃんとわかってよかった。安心して休日にサイクリングなどを楽しんでいます」と喜ぶ。

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 メニエール病の確実な治療法は見つかっていない。早期発見できれば完治する可能性もあるものの、男性の場合は発見が遅かったこともあり、軽度の難聴は残ったままだ。

 従来の診断では、めまいや難聴といった症状がはっきり確認できないと、メニエール病と結論づけるのは難しかった。画像診断なら疑いのある段階で判断でき、早期治療も期待できる。

 「研究を始めた2000年代半ば頃の技術では、内耳の骨の部分しか見えなかったが、現在は内部の組織まではっきり撮影できるようになった。技術をさらに高め、難病に立ち向かいたい」。山根が力を込めた。(敬称略、諏訪智史)

めまい、耳鳴り繰り返す…発症仕組み未解明

 メニエール病は、約150年前に内耳の病変によるめまいを発見したフランス人医師にちなんで命名された。めまいや難聴、耳鳴りが長期にわたって繰り返し起きるという特徴がある。片耳の症状が多いものの、進行すれば、両耳で発症するケースもある。

 リンパ液が蝸牛や前庭にたまり、水ぶくれができるのが原因とされる。だが、なぜたまるのかについては様々な説があり、確定していない。ストレスや睡眠不足で悪化すると言われ、難聴は特に治りにくい。

 初期の治療では、ストレスを減らす軽い運動のほか、体内の余分な水分を排出して水ぶくれを抑えるために利尿薬を試す。

 病状が悪化すると、水ぶくれを切ってリンパ液が流れるようにする手術や、前庭の機能の一部を薬剤の注入で失わせ、めまいを感じないようにする治療を行うことがある。ただし、難聴が悪化するといった副作用の恐れがある。

 
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