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子宮移植、まずは倫理指針…研究会で課題検討

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 生まれつき子宮がない女性や、がんなどで子宮を失った女性に第三者の子宮を移植する「子宮移植」について検討する研究会が発足した。7月中に倫理指針をまとめる計画だが、国内での実施には、提供者の健康面への影響や倫理的課題も指摘されている。

 「子宮がなくても、自分で子どもを産みたい」。そんな願いが現実のものとなる日が来るかもしれない。

 生まれつき子宮がないロキタンスキー症候群の患者や、子宮けいがんなどで子宮を摘出した人は国内に20~30歳代だけで推計6万~7万人。こうした女性に子宮移植は一つの選択肢となる可能性がある。


■ 成功へのハードル


 子宮移植は、女性の卵巣から卵子を採って夫の精子と体外受精させ、受精卵を凍結保存。提供者から子宮を移植した後、受精卵を戻して妊娠、出産を目指す。

 子宮移植に関する国内の研究は2009年から始まった。慶応大などのチームが実験を重ね、13年に子宮を一度摘出して、再び移植し直したサルを出産させるのに成功。この実験を踏まえ、今年3月、産婦人科医らが「日本子宮移植研究会」を発足させた。

 しかし出産までに越えなくてはならない幾つかのハードルがある。

 海外では00年から11例の子宮移植が行われているが、出産に至った例はない。12年からスウェーデンで実施された移植で、初の出産が期待されているが、成功率を高めるために必要な技術の解明はこれからだ。

 子宮の提供者の身体面、精神面のケアも課題だ。生体移植の場合、提供者の子宮を摘出する際、周囲の血管を長めにとって通常より広く摘出するので身体への負担が大きい。

 研究会の代表幹事を務める慶応大学産婦人科の木須伊織助教は「提供者には、子宮を失うことによる精神的な負担もかかる。十分なカウンセリングが欠かせない」と話す。

 生まれる子どもへの影響を心配する声もある。子宮を移植された女性は、拒絶反応を防ぐため妊娠中も免疫抑制剤を飲み続けなければならないためだ。

 日本移植学会の理事長を務める大阪大学の高原史郎教授は「免疫抑制剤の服用で、奇形を持った子どもが生まれる可能性が若干高くなるというデータはあるが、今は他の臓器を移植した後に健康な子どもを出産している例も多い。一方で、移植後の子宮が胎児にとって安全な環境となり得るのか、懸念もある」と話す。


■ 歯止め必要

 倫理的な問題が生じないように歯止めが必要だ。研究会が作成中の指針では、自分の卵子で受精卵が作れる女性を対象とし、提供者は、移植を希望する女性の母親など親族をはじめ、通常の移植同様、心停止や脳死となった人とすることが検討されている。

 研究会理事長の菅沼信彦京都大教授(生殖医学)は「移植を望む患者の母親が子宮の提供を暗に強制されたりするなど、社会的な圧力がかかる恐れがある。子宮移植は養子縁組や代理母なども含め、あくまでも選択肢の一つととらえてほしい」と話す。

 子宮移植が一つの選択肢となり得るのか。医療関係者だけでなく市民を交えた慎重な議論が求められる。(編集委員 鈴木あづさ)

 
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