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薬ネット販売解禁…偽造薬が横行、啓発急務

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 市販薬のインターネット販売が原則解禁され、ネットを通じた薬の購入が日常的になる。それに伴い、ネット上の悪質な輸入代行業者を通じて販売される未承認薬や偽造薬の広がりが懸念されている。

ネットで個人輸入した薬の偽造品

 市販薬のネット販売を原則解禁する改正薬事法が6月に施行され、障害者や不便な場所に住む人も含め、誰でも自宅にいながら薬が買えるようになった。販売できるのは、実在の店舗を持ち、ウェブサイトの管理者名やアドレスを届け出た1028薬局(5月末現在)だ。


■ 悪質な輸入代行

 解禁といっても、あくまで許可された薬局の市販薬販売が対象だが、厚生労働省の担当者は「一番心配なのは、悪質な個人輸入代行業者の問題だ」と語る。

 ネット販売が薬の購入手段として定着すれば、ネット上に氾濫する個人輸入代行業者を通じ、未承認薬などリスクの高い医療用の薬(処方薬)や、その偽造品まで買ってしまうケースがさらに増え、健康被害が拡大する恐れがある。

 薬の個人輸入には原則、厚労省の発給する「薬監証明」が必要で、一般の個人への発給件数は2012年度、1202件(3003品目)。ただし、一定量を自分用に買うなら薬監証明は不要で、実際はもっと多くの利用者がいるのは間違いない。

 ネットの普及で、未承認薬で命をつなぐがん患者のような例だけでなく、勃起障害(ED)治療薬や発毛剤、ダイエット薬などを求める人も増えている。ある医師専門の輸入代行業者は「問い合わせの8割は一般の人。美容関連の薬に関心が高く、医師になりすまして発注しようとする人さえいる」という。

 ただし、輸入代行業は行政の許可制がなく、どのような業者が参入しているかわからない世界。「犯罪の温床」「無法地帯」とも言われるゆえんだ。

 金沢大の木村和子教授(国際保健薬学)は06年から、ネットの代行業者を介して薬を買い、調査している。年30程度のサイトから、ダイエット薬、抗うつ薬、緊急避妊薬、ED治療薬などを買って分析してきた。

 調査で浮き彫りになったのは、説明書が不正確、使用期限切れなど保健衛生上の問題のほか、どの国も承認していない無評価薬や偽造薬の販売が横行している実態だ。

 木村教授は「薬の輸入代行業には国際的な規制もなく野放し状態で、一般の人が利用するのは危険。特に日本人は偽造薬の問題や薬のリスクに対して無防備なところがあり、啓発や教育が必要だ」と指摘する。

 「健康食品」として売られていても、薬の成分が入っている場合がある。厚労省が12年度に調べた109製品のうち56製品から医薬品成分が検出された。


■ モグラたたき

 厚労省は4月から監視を強化、5月末までの2か月間で違法サイト35件を削除した。しかし、次々新しいサイトが立ち上がり、「モグラたたき状態」(同省担当者)という現実は変わらない。

 未承認薬の問題に詳しく、偽造薬に関する厚労省の対策会議委員を務める「卵巣がん体験者の会スマイリー」の片木美穂代表は「処方薬については、医療上本当に必要な患者にだけ正規品が確実に手に入る仕組みを作るとともに、そうでない個人は簡単に輸入できないよう規制することも必要ではないか」と話す。

 薬は体にとって異物で、リスクを伴う。素人判断の使用ではなおさらだ。消費者自身も、むやみに危険に近づかない自覚を持ちたいものだ。(医療部 高梨ゆき子)

 
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