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香道…匂いほのか 違い堪能

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安里さん(左)の指導で香りを聞く畑山さん(右)と中村さん夫妻(京都市上京区で)=宇那木健一撮影

 古くから貴族や武士に親しまれてきたお香。心が落ち着き、茶道、華道に並ぶ日本三大芸道の一つ、香道の深遠な世界にも触れられると、聞香もんこう体験が人気だ。シニア3人が挑戦した。

 奈良市の畑山充子みちこさん(64)と滋賀県甲賀市の中村政一さん(66)、幸子さん(57)夫妻。創業200年余の老舗、山田松香木店(京都市上京区)を訪ねた。

 におい袋や線香が並ぶ店内を通り抜け、奥にある4畳半の和室に通される。緊張気味に正座する3人。講師の同店スタッフ、安里菜絵さん(37)が姿を見せ、「体験なので楽にされていいですよ」と一声かけると、場が和んだ。

 まず、香道の歴史や作法が説明された。香りは「かぐ」とは言わず、「聞く」と表現する。聞香では、香木を細かく切り、焦がさないよう間接的に熱を加えてたき、煙をたてずに香りを鑑賞する。

 体験するのは、数種類の香木をルールに従って聞き当てる「組香」の一種で、初心者向けの「三種香」。3種類の香木から3片ずつ、九つの包みをつくり、無作為に三つを選んでたき、香りの異同を判別する。

 静寂の中、安里さんが準備する。小さな炭団たどんと灰が入った聞香炉に熱を均一に伝えるための薄い雲母の板を置く。その上に数ミリ角の香木片をのせると、ほのかな香りが漂った。線香のような強い匂いではない。かすかに感じる程度だ。

 最初に政一さん。前に置かれた聞香炉を左の手のひらにのせ、反時計回りに回してから、右手で蓋をするように覆う。鼻を近づけて香りを聞いた。少しして顔を横にずらし、息をはく。3回くり返して香りを覚える。聞香炉を置き、幸子さん、畑山さんが順に聞く。2番、3番目の香木片も同様に聞香した。

 聞き終えると和紙に毛筆で回答する。三種香では、縦線を平行に3本引き、同じ香りだと思う線の上端を横線で結ぶ。三つとも同じか、あるいは1番と3番が同じか、すべて違っていたか……。違いはごく微妙なものだ。3人は首をかしげながら筆を動かした。

 最後に、3人が描いた答えが読み上げられた。結果は、2番目と3番目が同じ香り。「すごく悩んだ」という畑山さんと幸子さんが正解した。

 「みんなに好かれる人気の香りはありますか」。そんな質問に、安里さんは「人それぞれ香りの好みは違う。生活スタイルやシーンに合わせて楽しんでほしい」とアドバイスした。(住田勝宏)

静かな空間癒やし

 中村政一さん「煙が上がって、もっと強い匂いがするイメージがあったけど、全然違っていました。でも、やっぱり緊張しました」

 中村幸子さん「心が落ち着くというか、癒やされる感じになりました。静かな空間で、香りをかぐことに集中できました」

 畑山さん「優雅なひとときを過ごせました。これまでは、直接火をつけるお香をしてきたけど、間接的なお香にも挑戦します」

室町期 盛んに

 香は、仏教とともに大陸から伝わったとされる。平安時代には、貴族が自分独自の香りを調合し、衣服や髪にたき込めるようになった。室町時代になって、8代将軍足利義政らによって聞香が盛んに行われるようになり、「六国りっこく五味」と呼ばれる香木の分類法がつくられた。

 六国は香木の種類を指し、羅国(タイ)、寸門多羅(スマトラ)など、産出地に由来。五味は香りの表現で、甘い、酸っぱい、辛いなどで分けられる。江戸時代に香作法の基盤が完成。現在は、御家流と志野流のほかに幾つかの流派がある。

 京都市内の老舗店などで、聞香やオリジナルの香りをつくる調香などを体験できる。

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