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いのちに優しく いまづ医師漢方ブログ

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「耐性菌」を生まないために

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 7月の京都は、毎年うだるような暑さの中、1か月続く祇園祭で賑わいます。みなさんは、ご覧になったことはありますか。今年は、山鉾やまほこ巡業が7月17日と24日の二日間に分かれて行われるそうです。山鉾も増えて、盛大な祭りになるでしょう。

 ご存じのように、祇園祭は、およそ1100年前の清和天皇のとき、京洛に疫病が流行したため、病魔退散を祈願したところから始まったそうです。まだ、抗生物質や抗ウイルス剤がなかった時代、目に見えない病原菌による感染症は、恐ろしい存在だったことでしょう。

 いまでも、わたしたちの生活と感染症は切っても切れないものです。疫病といえば、宮崎で起こった口蹄疫こうていえき問題や、熊本の鳥インフルエンザなどが、記憶に新しいと思います。人では、2年前に、おたふく風邪(ムンプス・流行性耳下腺炎)が流行し、問題になりましたね。

抗生物質乱用がもたらした危機

 感染症問題でも注目すべきは、わたしたち医師が、安易に抗生物質や抗ウイルス剤を使っていることです。

 1980年代の日本では、抗生物質が効かない病原菌が爆発的に増えました。薬が効かない病原菌に感染すると、死亡する危険性が高く、院内感染の原因として大きな問題となりました。原因は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin resistant Staphylococcus aureus:MRSA)です。日本は諸外国と比較すると、MRSAの感染数が際立って高かったため、多くの命が失われました。MRSAが広がってしまった原因は、いくつも考えられますが、そのひとつは、医療現場で抗生物質が乱用されたことが挙げられます。その結果、メチシリンをはじめとする抗生物質が効かなくなってしまいました。

 最近は、抗ウイルス剤が日本で、大量に使われています。実際、日本は、インフルエンザに用いられるタミフルの消費量が非常に多く、日本だけで世界の70~80%を消費しています。

 どうして、日本では抗生物質や抗ウイルス剤が、乱用されてしまっているのでしょうか。それは、医療従事者への感染症の教育が不十分なことが大きな原因と考えられます。

 医学部を卒業後、一度は臨床の現場で活躍しいていたわたしの後輩が、感染症を学ぶために、国立感染症研究所で研修をしています。しかし、生活は厳しく、研究費も少なく、「バイオテロがおこっても、今の日本では対応が難しいと思います」と、真剣な顔で話してくれました。

 夏休みになり、海外へ旅行する人も増えてきます。世界の各地にある感染症が、知らないうちに日本へ持ち込まれることも、予想されます。清和天皇の時代に起きた疫病が、再び時代を変えて、現代の日本で起こらないとも限りません。感染症対策、大変に重要な問題です。

 まずは、医師をはじめとした医療従事者が、しっかりと感染症についての知識を学ぶ必要があります。その上で、安易な抗生物質や抗ウイルス剤の使用をしないことが大切です。

古くからの薬だからこそ

 こんなときこそ、漢方薬の出番です。抗生物質も抗ウイルス剤もない時代に活躍した漢方薬をうまく活用することで、多くの感染症を治療することができます。例えば、葛根湯かっこんとう。風邪を葛根湯で治療するときのコツは、「風邪をひいたかな」という、ごくごく初期の段階で内服を開始することです。なんだか体の調子がおかしい、首がこる、なんとなく寒気がする、などのほんのちょっとした変化が起きたときに、葛根湯を内服することです。

 よいタイミングで漢方薬を使うことで、抗生物質や抗ウイルス剤を使うことなく、風邪を治すことができます。抗生物質と抗ウイルス剤の使用量を減らすことで、第二のMRSAを生み出さないようにしましょう。漢方薬が、その原動力になります。

 どうか、日本全国の医療従事者が、積極的に漢方医学を学び、感染症に負けない国になってもらいたいものです。

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いまづ医師の漢方ブログ_顔120

今津嘉宏(いまづ よしひろ)

芝大門いまづクリニック(東京都港区)院長

藤田保健衛生大学医学部卒業後に慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。国立霞ヶ浦病院外科、東京都済生会中央病院外科、慶應義塾大学医学部漢方医学センター等を経て現職。

日本がん治療認定機構認定医・暫定教育医、日本外科学会専門医、日本東洋医学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

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6件 のコメント

状況と相手に合わせた診断治療 教育的観点

元放射線科医 寺田次郎 六甲学院56期

先日、知人の先生の代理で近所のサッカーの手伝いに行きました。気になった選手の症状はプレーをチェックして経過観察しましたが、湿布も内服も使いません...

先日、知人の先生の代理で近所のサッカーの手伝いに行きました。
気になった選手の症状はプレーをチェックして経過観察しましたが、湿布も内服も使いませんでした。
軽症はアイシングのみで、圧迫や挙上なども特に指示しませんでした。
理由は簡単で育成年代だったからです。
痛みが強ければ勝手に安静にするか、患部を庇うだろうし、痛みが弱ければ言ってもまず聞きません。
(生徒に聞かれたことはヒントやキーワードを与えて自分で調べるように誘導しました。 また、お風呂場の洗面器やバケツを使ったより効果的なアイシングも教えました。)

鎮痛薬は痛みを軽減してくれますが、そのことによって選手が無理をしたり、痛みの症状が見えにくくなって経過観察の妨げになったりすると中長期的観点では良くないと考えました。

一回限りの試合やトーナメントでなければ、投薬をして内臓に負担をかける必要はありません。

いつもの先生の丁寧な診察に比べられたのか、少しやる気を疑われてしまいましたが、他の関係者の頑張りもあって、幸い大事もなく終了しました。

生徒たちは靴ひもの結び方、立ち方、走り方から全然でしたが、こそっと指摘されると意識して修正、成長できる生徒を見ると、僕も意識上げていかないとイカンなあと思いました。

ちなみに、氷嚢は怪我のアイシングだけでなく、熱中症予防に有効です。
大血管が体表に近いところを走る首、腋、鼠径部の冷却は体内の冷却に有効ですし、頭から水をかけて気化熱による冷却もできます。
今はコンビニで冷凍ジュースも売られていますが、水の方が氷よりも表面積が広く冷却効率が高いので、水道水を入れたビニール袋の中に入れて使うこともできます。
医療から物理化学の知識も含めてサッカーだと、伝わっていればいいと思います。

軽症患者はマイルドな治療からですね。

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漢方に私の100歳人生を

埼玉のシニア

先生のおっしゃる通りでございます。漢方医学をもっと日本の医学の治療に役立てる対策はないものでしょうか。風邪を引けばあれこれ薬をくれますが、まず処...

先生のおっしゃる通りでございます。
漢方医学をもっと日本の医学の治療に役立てる対策はないものでしょうか。
風邪を引けばあれこれ薬をくれますが、まず処方通りに薬を飲むと胃炎を起こしますので困ったものです。じっくりと直すには時間がないこともありますし、強力な解熱剤で治療することは解りますが、何かが心配で私はいただいた薬は半分しか飲みません。

それより日ごろから生姜などを食して体力をつけ、はちみつ入り黒酢に付けたにんにくを食べたり、大豆食品を摂取するなど、日ごろからの食生活に知恵を絞っています。

新しいものへ直ぐ飛びつく典型的な日本人ですが、体は食で先ず防御、次いで体力の為の運動、三番目に趣味の追求、これが今の私の生き方の大原則。異性への興味も大です。一度先生のクリニックに伺ってみようかと考えています。何しろ100歳まで生きてこの世の楽しみを追求しまくりたいのが、今の私の生き方ですから。

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どんな良薬も、諸刃の剣

めざめたじいさん

 日本がこれほど長寿国になれたのは、高価な抗生剤を貧富の差もなく使えたことによると思う。貧乏人のせがれの私も80歳まで生きられた。抗生剤に何回お...

 日本がこれほど長寿国になれたのは、高価な抗生剤を貧富の差もなく使えたことによると思う。貧乏人のせがれの私も80歳まで生きられた。抗生剤に何回お世話になったことだろう。
 家内の家は貧乏ではなかったが、病気は並以上に罹り、その都度医師によって命を保てた。最も心配だったのは骨が腐ったときだ。乳がんの時にかけたコバルトが元で鎖骨、胸骨、肋骨がダメージを受けた。4回の大手術で鎖骨、胸骨をとり、肋骨は4回に分けて7本切除。その時使った抗生剤は彼女の命の恩人だ。胸の皮膚移植の時も全身麻酔で、大量の抗生剤が使われたことだろう。
 乳がん発症の頃、丸山ワクチンが登場した。素人考えで、担当医に「丸山ワクチンは使わないのですか」と聞いた。しかし、まだ実験段階で、大事な命を任せられないと断られた。
 先生の「抗生物質乱用がもたらした危機」を読むと怖くなりますが、やむを得ず使った抗生剤、耐性菌を増やしたかも知れぬが、その時は本当にありがたい薬だった。
 「諸刃の剣」とやよく言ったもので、感染症を防ぐために使われて薬が、抗生物質が効かない病原菌を増やしたとは、何とも言えない複雑な気持ちである。
 
 

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