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医療・健康・介護のニュース・解説

基礎からわかる混合診療(1)保険治療と保険外 併用

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 政府が限定的にしか認めてこなかった混合診療が、安倍首相の強い意向で大幅に拡充されることとなった。来年度にも始まる新しい制度では、患者が希望すれば、海外で行われている進んだ医療を利用できる可能性が出てきた。


Q どんな仕組み

 混合診療とは、公的医療保険で認められている治療(保険診療)と、認められていない治療(保険外診療)を一緒に行うものだ。

 保険診療では、患者は医療費の一部(原則3割)を負担するだけで済む。ところが、保険外の治療や薬を併せて使おうとすると、本来なら保険がきく診察代や入院費用なども含めて、患者の全額負担となる。厚生労働省が「安全性や効果が不確かな治療法が広がる懸念がある」と、混合診療を原則禁止してきたからだ。

 治療が難しい患者らからは、保険診療には保険を適用して、経済的な負担が重くなりすぎないようにしながら、国内で未承認の薬や医療機器などを使った先進的な治療も受けたいという切実な要望が出ていた。

 背景には、海外の新薬が国内で承認されるまでに時間がかかる「ドラッグ・ラグ」の問題がある。薬の安全性や有効性を確認するための国の審査・承認手続きの期間は、日本の方が米国より約半年長い。医療機器の開発から承認までの期間が、米国より2年近く長い「デバイス・ラグ」も指摘されている。

 混合診療を求める声は経済界にもある。医療技術の開発を促し、医療が新たな成長産業になるとの期待があるためだ。政府の規制改革会議は、混合診療を成長戦略の柱に位置づけている。

 混合診療の先駆けとなる制度は、1984年に始まった。ただ、対象は歯科治療の一部や差額ベッド代などわずかだった。小泉政権下の2004年には、政府の規制改革・民間開放推進会議が混合診療を全面的に認めるよう迫った。厚労省や日本医師会は「患者の経済力で医療に差が出る」と強く反対したが、最後は厚労相と行政改革相が対象を広げることで合意した。

 これを受けて06年に作られたのが「保険外併用療養費制度」だ。将来の保険適用に向けて効果を検証中の治療や薬などを対象とした「評価療養」(7種類)と、差額ベッドなどの「選定療養」(10種類)について、例外的に混合診療を認めた。評価療養には、がんの重粒子線治療、アルツハイマー病の遺伝子診断など先進医療の95技術(6月現在)が認められたが、「対象を一部拡大しただけだった」との評価もある。

 政府の規制改革会議が中心となった今回の第2次安倍内閣での新しい制度は、患者が希望する治療を選べる制度となっており、「対象の拡大という面では最大限の内容」(政府関係者)との声もある。

 
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