文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

専門家に聞きたい!終末期と緩和ケアの本当の話

yomiDr.記事アーカイブ

鎮静(4)在宅でも鎮静はできる…点滴や注射、坐薬も

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 さて、3回にわたって鎮静のお話をして参りました。

 がんの患者さんの、主に余命が数日の方の高度の苦しみに、鎮静薬を使ってうとうとと眠れるようにして苦痛を取るものであること、命は一般に縮めないことなどをご理解いただけたのではないかと思います。大切なのは正当な手続き、正当な方法で行うということでしょう。

 在宅でも鎮静はできるでしょうか。

 残念ながら印象として、鎮静まで施行できる在宅医は多くはなさそうです。

 しかし、一般に在宅で時間を過ごされている方は、病院で最期の時間を過ごされている方より苦痛が少ないこともあるため、鎮静が必要にならないことも少なくありません。

 なお日本の調査(Morita,2004)では、がん治療病棟と緩和ケア病棟で、深い持続的鎮静を要した患者は3割とされています。3割だから半分未満とも言えますが、逆に「深い持続的鎮静」というそれだけしっかりした鎮静をかける必要があったがんの末期の患者さんが1/3もいるということなのです。在宅でも、そこまで至らずとも、鎮静が必要な患者さんは確実にいらっしゃいます。もっとも症状緩和技術の進歩とともに、また前回述べた「間欠的鎮静」や「浅い鎮静」の普及もあり、「深い持続的鎮静」を施行する患者さんの割合は下がる傾向にあり、私の最近の経験ではおおよそ10%以下となっています。

 また私が在宅緩和ケアを行っていた際は、坐薬ざやく」の鎮静薬をよく使用していました。

 眠りたいけれども、点滴は嫌という患者さんがいます。

 もちろん鎮静は「皮下注射で行います」(静脈注射でも行えます)ので、金属針ではない軟らかい材質の小さな針を入れて、細い管、ペンケース型の注射器ホルダーをつなげるもので、一般的な静脈点滴とは異なりますし負担も軽いです。

 けれども一切の管が身体につながるのは嫌だという患者さんもいらっしゃいます。そのような方は坐薬の鎮静薬があることに喜んでいました(坐薬の鎮静薬については拙著『間違いだらけの緩和薬選び』を参照ください)。

 このように静脈点滴でするのか、皮下持続注射でするのか、坐薬でするのか。あるいは間欠的に(必要な時だけ)するのか、浅く行うのか、あるいは深く行うのか。様々な形態と深さを、第一にその方の希望に沿って、適切な方法で行うというのが鎮静なのですが、問題はこれらを上手に使い分けられる施設が必ずしも多くないことです。

 緩和ケア病棟はどこも鎮静には習熟していることでしょうし、病院に緩和ケアチームがあれば鎮静について知識と経験を有していると考えられます。

 個人的には、終末期は鎮静がきちんと施行できる医療者に関わってもらって迎えるのが良いと考えます。鎮静で抑えきれない症状が予後数日で出た際に、症状緩和してもらえるからです。

 もっと鎮静のことが正しく知られることを願って、鎮静のシリーズを終えます。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

専門家に聞きたい!終末期と緩和ケアの本当の話_profile写真_大津秀一

大津 秀一(おおつ しゅういち)
緩和医療医。東邦大学医療センター大森病院緩和ケアセンター長。茨城県生まれ。岐阜大学医学部卒業。日本緩和医療学会緩和医療専門医、がん治療認定医、老年病専門医、日本消化器病学会専門医、日本内科学会認定内科医、2006年度笹川医学医療研究財団ホスピス緩和ケアドクター養成コース修了。内科医としての経験の後、ホスピス、在宅療養支援診療所、大学病院に勤務し緩和医療、在宅緩和ケアを実践。著書に『死ぬときに後悔すること25』『人生の〆方』(新潮文庫)、『どんな病気でも後悔しない死に方』(KADOKAWA)、『大切な人を看取る作法』『傾聴力』(大和書房)、『「いい人生だった」と言える10の習慣』(青春出版社)、『死ぬときに人はどうなる』(致知出版社)などがある。

専門家に聞きたい!終末期と緩和ケアの本当の話の一覧を見る

最新記事