文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

作家・作詩家 なかにし礼さん

一病息災

[作家・作詩家 なかにし礼さん]食道がん(6)「夢の治療」で腫瘍が消えた

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 聞き慣れない「陽子線治療」の病院に朝一番で電話した。食道がんはこの治療の適用対象に明記されていなかったが、面談した主治医は「完治をめざしましょう」と言ってくれた。

 まず、心臓病の主治医の病院と連携して抗がん剤治療を行い、食道の腫瘍を半分に縮めた。この後の陽子線治療は1回30分。初めの25分は食道の動きなどの計測が行われ、最後の5分間、患部に陽子線が照射された。これを6週間で計30回。

 全工程が終わり、1か月後の検査で腫瘍が消えたのが確認された。2012年秋、半年ぶりに仕事を再開、コメンテーターを務めるテレビ番組にも復帰した。

 「夢の治療」といわれるが、実施施設は全国で約10施設。普及しないのは理由がある。医療機器が1基約80億円で、健康保険の対象にならない先進医療のため、患者の自己負担が約300万円かかる。欧米ではこの倍近い負担だという。

 「多くの人が高いと言うが、自分の命に値段をつける気にはなれない。この治療を早く健保適用にして、実施病院を増やすよう、国が努力すべきです」

 がんから生還し、我が国の行く末がいっそう気になってきた。言うべきこと、書き残すべきことを、きちんと次の世に伝えていこうと誓っている。(文・斉藤勝久、写真・藤原健)

 

 作家・作詩家 なかにし 礼(れい)さん(75)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

sokusai_117

 
 

一病息災の一覧を見る

作家・作詩家 なかにし礼さん

最新記事