いのちに優しく いまづ医師漢方ブログ
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体調は髪や地肌にも表れる
10年来、通っている床屋へ、久しぶりに行ってきました。床屋の
世界で最初の外科医は床屋の職人だった、と言われています。床屋の前に飾られている「赤、青、白」のマークは、「動脈、静脈、リンパ」を表しているという説もあるそうです。そんなこともあり、外科医のわたしは、床屋の職人芸にこだわりがあります。
以前、髪を扱うことを専門にしている方から、「病気になると髪が変わるんですよ」と教えていただいたことがあります。どんな風になるのかとたずねると、「髪が、細くなり縮れてきます」とのこと。なるほど、髪に栄養が行き渡らないために、弱くなってしまうんだなぁと納得しました。
「髪だけでなく、地肌も変わります」と、さらに話は続きました。「血流が悪くなるため、地肌の色が悪くなるんでしょうね」と、解説を入れてもらいました。
この話を聞いてから、自分の地肌の色が気になり出しました。体の調子が悪いとき、地肌の色が悪くなるのならば、地肌の色をできる限り、良い状態に保つために何かできないものか、と考えるようになりました。
なぜ、わたしが髪のことに興味を持っているのか、というと、私自身、抜け毛と白髪に悩んだことがあったからです。5年ほど前、スイスへ留学していたときのことです。ストレスのために、髪を洗うたびに大量の髪が抜けるようになってしまいました。日本に帰ってきた時には、わたしの頭には白髪も目立つようになっていました。
体調と髪は切っても切れない関係にあることは、自分の経験からよくわかりました。外来に髪の問題を抱えている方が来れば、同じ気持ちになって問題解決に取り組むようになりました。
仕事のストレスや、人付き合いのプレッシャーなど、精神的な問題が原因と考えられる場合は、少しでも精神的負担を軽くする漢方薬を処方するようにします。例えば、柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)です。
男性でも女性でも、年齢の変化で髪が薄くなることがあります。以前にも、書かせていただきましたが(2013年5月10日「髪の悩み、男と女で処方違う」)、脱毛における漢方治療のポイントは、男性には元気をつけるように、女性には女らしさを取り戻すような処方を心がけることです。加齢の変化やホルモンのバランスが原因と考えられる場合は、地黄(じおう)が含まれた漢方薬を処方するようにしています。男性には八味地黄丸(はちみじおうがん)、女性には四物湯(しもつとう)です。
がん化学療法による脱毛には、なかなか良い方法がみつかっていません。治療中は、髪だけでなく、眉毛もまつげも抜けてしまいます。少しでも軽くなるようにと、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)を使っています。
わたしがまだ幼稚園に通っている頃、叔父から「人は、どうして年を重ねると髪がうすくなるのか」と質問されたことがあります。一緒にいた兄は、すかさず「勉強のしすぎでしょう」と答えていました。わたしはその後、こっそり飲んだ漢方薬のおかげか、不勉強のおかげか、髪がうすくなることなく今にいたりました。
髪と体調管理、毎日の手入れをおこたることなく過ごしたいものです。もし、髪のことで悩んでいらしたら、一度、漢方医に相談されてはいかがでしょうか。
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むかしの職場で毎年開かれる恒例会でのこと。
白髪の壮年ににこやかに声を掛けられた。どこかで見た顔だが・・・。「まさか忘れてはいないでしょうね」と言われ、「え!あのTさん?」と言いそうになった。20年も同じ職場でいながら、忘れるはずはなかった。しかし、この白髪はなぜ?
この1年、彼は長いこと嘱託をしていた事業所を辞め、フリーになったのだ。彼の専門は生物学で昆虫や鳥に興味を持っている。なかんずくチョウは彼の得意分野だ。
体調によって髪が白くなると言うが、彼はすこぶる元気で、野山を歩き回っているという。この白髪は体調とは無関係のようだ。
おとぎ話の「うらしまたろう」は、竜宮城から帰ってみれば、村人はみな知らない人ばかりだったと。その落胆ぶりは、玉手箱を開ける前に、髪が真っ白になるほどだったろう。気が動転して白髪になったことを、玉手箱の煙を使って説明しているのだろう。
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