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作家・作詩家 なかにし礼さん

一病息災

[作家・作詩家 なかにし礼さん]食道がん(5)「陽子線治療」自分でたどり着く

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 見つかった食道がんは、発症1年3か月と推定された。精密検査を毎年3月に受けてきたが、前年は東日本大震災があった。大きな被害を見て、自分の健康に一喜一憂する後ろめたさも感じ、検査を受けなかった。早期発見の機会を逃した。

 コメンテーターをしていたワイドショーで、病名を公表し降板した。4人の医師が異口同音に手術を勧めた。しかし、持病がある心臓は健常者の約半分の能力しかない。手術には耐えられそうになかった。

 手術を促す医師に、手術をしないと「余命半年」だと示唆された。手術も仕方ないか、と思うこともあった。だが、満州(現中国東北部)逃避行での母の言葉がよみがえる。「だれも信じてはいけない。自分で生きなさい」

 自問した。「自分の命の問題なのに、いつから聞き分けのいい大人になったのか。自己主張して、すべて自分で決め、新しい世界を切り開いてきたのに」。がん治療の“常識”に抵抗して、自分で治療法を見つけると決意した。

 夫婦でインターネットで調べ、たどり着いたのが先進医療の「陽子線治療」だった。放射線治療の一種だが、エックス線と違い、病巣に効率よく照射できるので、副作用が少ない。患部以外のダメージを抑えることができるので、心臓に不安があっても治療はできる。

 「これだ」と確信した。

 

 作家・作詩家 なかにし 礼(れい)さん(75)

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