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イグ・ノーベル・ドクター新見正則の日常

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「たばこ非合法の国」が僕の夢

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 僕の大切にしていることは、「人はいろいろ」、そして「人生もいろいろ」です。みんな一生懸命に生きているのです。社会は時に理不尽で、不平等で、矛盾が一杯です。そして整合性がある生き方だけを、確率論的により正しい選択肢だけを人は選ぶわけでもありません。だからたばこを吸っている人の立場も理解しようと思っています。


条件は「人に迷惑をかけない」

 繰り返しますが、僕はたばこが大嫌いです。ただ、たばこが合法である以上、たばこの危険を承知で吸うという選択肢もあるという立場です。その条件は、人に迷惑をかけないことです。

 たばこの煙は本当に嫌煙家には不愉快なのです。たばこを吸っている人には、このぐらいは何でもないだろうと思えるようなちょっとした煙も本当に不愉快なのですよ。だから、歩きたばこも、はるか前方で吸われても、不愉快なのです。

 「人に迷惑をかけない」という人には、家族も含まれますよ。庭が広ければ外で吸って下さい。マンションのベランダはダメですよ。上下左右の住戸に迷惑です。それぐらいたばこの煙は遠くまで不愉快なのです。

 妊婦が吸ってはダメなのは当然ですよ。胎児はあなただけのものではありません。赤ちゃんは親を選べないのですよ。せめて妊娠中や育児中は喫煙を控えて下さい。そして子供にはたばこの危険を正確に伝えて下さい。決して、子供に喫煙を勧めないで下さい。

 たばこが健康に悪いことは明白です。喫煙の危険を正しく説明すれば吸い始める人は激減するはずです。


吸い始めない環境づくりを

 たばこはやめるのが大変なのです。吸い始めない環境をつくることが何より大切と思っています。つまりたばこの危険性を正しく理解すること、啓蒙けいもうすること、教育することが大切です。たばこの危険性は、国立がんセンターのホームページに書かれています。書籍の方が読みやすい方は、国立がん研究センターがん予防・検診研究センター長の津金昌一郎先生の本が、サイエンスに基づいた情報が偏りなく書かれていてお薦めです。僕は自分の経験やその他の本の知識を加えて以下のようにたばこの害を説明しています。


 「たばこを吸っていると男性では喉頭がんに約15倍以上、食道がんに2倍以上、肺がんには4倍以上かかりやすくなります。他にもたばこを吸うことは、男性で、胃がん、すい臓がん、大腸がん、肝臓がん、腎臓がん、尿管がん、骨髄性白血病の原因になります。たばこをやめると、肺がんの発生率は10年で半減します。運良くがんにならなくても慢性閉塞性肺疾患に10倍以上かかりやすくなります。心疾患や脳卒中の可能性も高くなります。また、愛煙家の方が認知症になりやすいという報告も多数ありますよ」



やめられない、かわいそうな人々へ

 日本のたばこのパッケージは、諸外国に比べると控えめです。控えめと言うのは、諸外国では、たばこが健康に害があることが明らかに分かるような、ある意味グロテスクな写真などがしっかりとたばこのパッケージに表示されています。

 たばこは明らかに健康に悪いのです。みんなでたばこをやめる努力をしましょう。そしてたばこを吸い始めない環境を作りましょう。でもたばこの危険を十分承知で、でもやめられない人々もいます。そんなかわいそうな人の立場も理解してあげてもいいのではというのが僕の立ち位置です。

 たばこが非合法になればいいですね。そんな世界で最初の素晴らしい国にならないでしょうかね。僕の夢のひとつですよ。

 人それぞれが、少しでも幸せになれますように。

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知りたい!_20131107イグ・ノベーベル賞 新見正則さん(1)写真01

新見正則(にいみ まさのり)

 帝京大医学部准教授

 1959年、京都生まれ。85年、慶応義塾大医学部卒業。93年から英国オックスフォード大に留学し、98年から帝京大医学部外科。専門は血管外科、移植免疫学、東洋医学、スポーツ医学など幅広い。2013年9月に、マウスにオペラ「椿姫」を聴かせると移植した心臓が長持ちする研究でイグ・ノーベル賞受賞。主な著書に「死ぬならボケずにガンがいい」 (新潮社)、「患者必読 医者の僕がやっとわかったこと」 (朝日新聞出版社)、「誰でもぴんぴん生きられる―健康のカギを握る『レジリエンス』とは何か?」 (サンマーク出版)、「西洋医がすすめる漢方」 (新潮選書)など。トライアスロンに挑むスポーツマンでもある。

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