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作家・作詩家 なかにし礼さん

一病息災

[作家・作詩家 なかにし礼さん]食道がん(4)赤くただれた腫瘍 転移も

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 激しい心臓発作で、死ぬと思ったが、生き返ることが出来た。これを機に、人生でやり残していた「作家」になることを決意した。

 書いてみたいことが、たくさんあった。「まず、満州(現中国東北部)体験。100万人を超える満州からの引き揚げ者がいたのに、その実情を伝える本格的な小説はほとんどなかった」

 しかし、作詩家から作家への転身は、簡単ではなかった。「100メートル走のランナーがマラソンを走る感じ。7年ほど世間との連絡を絶ち、多くの小説を読み直して懸命に勉強しました」

 2作目の「長崎ぶらぶら節」が、2000年に直木賞を受賞。翌年には満州からの引き揚げ体験を描いた「赤い月」を出版した。「満州の語り部」ならではの作品だった。

 心臓病の方は、信頼できる医師とも巡り合えて、大きな発作はなかった。しかし、12年2月、のどの不快感と、むかつき、嘔吐おうと感に悩まされるようになった。

 胃カメラ検査の結果、食道がんが見つかった。4センチぐらいの赤くただれた腫瘍で、初期ではなく、ステージ2の後半と診断された。食道近くのリンパ節への転移が始まっていた。

 自覚症状はあった。2、3か月前からの、のどの違和感に加え、口臭や声のかすれを感じることがあった。「自分だけは、がんにならないと思っていたが……」

 「死」が頭をよぎった。

 

 作家・作詩家 なかにし 礼(れい)さん(75)

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