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アシストスーツ…リハビリ補助や介助者の負担軽減

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重さ10キロ軽々持ち上げ…政府も開発支援

 介護や医療の現場で、体に装着することでリハビリを補助したり、介助者の負担を軽減したりする「パワーアシストスーツ」。

 少子高齢社会の進展を見据え、政府も開発・普及支援に本腰を入れ始めた。アシストスーツの一つを実際に試し、開発の最前線を探った。

 東京理科大(東京都葛飾区)の会議室。全身まひで寝たきり生活の男性(37)がゆっくり歩き始めた。男性が身につけているのは、同大工学部の小林宏教授(47)が開発し、「マッスルスーツ」と名付けたアシストスーツだ。

 スーツは主に3種類あるが、歩行訓練用は両脚部分に6本のチューブ状の人工筋肉がある。圧縮空気を送り込むと人工筋肉が縮み、太ももが上がった。母親(62)は「こういう装置を探していた。息子のリハビリが少しでも進めば」と話した。

15年かけて改良

歩行訓練用のアシストスーツを使って、リハビリに取り組む男性。東京理科大の学生たちがリモコンで人工筋肉を操作する

 記者(32)も、腰の負荷を軽くする別のタイプのスーツ(重さ約5キロ・グラム)を試してみた。リュックサックのように背負い、のど元のセンサーに顎で軽く触れると、「プシュー」という圧縮空気の音とともに人工筋肉が縮み、上半身が後ろに引っ張られた。腕や腰にほとんど力を入れることなく、あっさり重さ約10キロのイスが1メートル近くも持ち上がった。違和感や痛みはない。

 15年かけて改良を重ねてきた小林教授は「このスーツの肝は、重いモーターの代わりに、1本200グラムと軽い人工筋肉を採用した点」と説明する。人工筋肉は太さ数センチのゴムをプラスチック繊維で覆った構造だ。同大のベンチャーを通じて、介護施設や物流企業などに600台近くを試験販売する予定だ。圧縮空気のホースが必要という制約がなくなれば、もっと動きやすくなると感じた。

日本主導で規格

アシストスーツを装着し、椅子を持ち上げる前村記者

 現在、介護ロボットの市場規模は10億円だが、20年後には4000億円に急拡大する見通しだ。人間と直接接触する介護ロボットは、産業ロボットと比べて、格段に高い安全性が求められる。これまでは安全性に関し、世界共通の規格がないことが、市場拡大にブレーキをかけていた。

 しかし、2月、日本主導で国際規格が導入された。規格を満たせば、安全性のお墨付きが得られる。国も今年度、開発費など約25億円を補助する。アシストスーツ「HAL」を実用化し、規格策定にもかかわった山海嘉之・筑波大教授(55)は「介護ロボットの開発で先行する日本にとって、国際規格は輸出に道を開く大きな一歩。ベンチャーから大企業まで市場参入が加速する」と話す。(前村尚)

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