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子宮筋腫の腹腔鏡手術…器具で「がん」飛散の恐れ

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 子宮筋腫の腹腔ふくくう鏡手術で、筋腫を切る器具が、がんを悪化させるおそれがあることがわかった。日本産科婦人科内視鏡学会が先月21日、患者や医師に注意を呼びかけた。手術を考えるなら、何を知っておけばよいだろうか。


代替手法 時間かかり傷大きく

 子宮筋腫は、子宮にできる良性腫瘍。貧血や痛み、頻尿など、つらい症状があれば治療が必要だ。不妊の原因になる場合もある。手術は、子宮をすべて取り除く「全摘」と、筋腫のみを切除する「核出」がある。

 腹腔鏡手術は、腹に5ミリ~1・5センチ程度の穴を3、4か所開け、小型カメラなどを入れて操作する。開腹より傷が目立たず、痛みも少なく術後の回復が早い。

 問題の器具は、主に核出手術で使う筒状の電動器具「モルセレーター」。先端の刃で筋腫を細長く切り、筒に入れた鉗子かんしでそれらの筋腫を取り出す。大きな筋腫でも小さな穴から短時間で取り出せる。

 学会が注意を呼びかけたのは、米食品医薬品局が今年4月、器具の使用を推奨しないとの通知を出したためだ。通知では、切除した病変が実は肉腫などがんだった時に、腹の中にがんをまき散らすおそれがあると指摘し、摘出した病変から肉腫が見つかるのは子宮筋腫手術を受けた人の0・3%と推計した。

 八重洲クリニック(東京)院長で画像診断医の澤野誠志さんによると、MRI(磁気共鳴画像)検査で、腫瘍の中で出血や壊死えしが起きているかどうかなど筋腫や肉腫の特徴が分かり、多くの施設では術前にこの検査を行っている。ただ、特徴がみられない病変もあり、澤野さんは「熟練した画像診断医でも、悪性か良性かを術前に完全に診断するのは難しい」と説明する。

 学会では、モルセレーターを使う場合は〈1〉術前の検査で悪性の疑いがあるケースを除く〈2〉がんを悪化させる危険性を患者に十分に説明し同意を得る――とする注意点をまとめたが、現在、主要製品が販売停止になり、別の製品も品薄状態。多くの医療機関は、器具を使わない手術法への変更を余儀なくされている。

 主流になりそうなのが、穴の1か所を広げて摘出する方法だ。へそや恥骨の上など目立たない場所でも、残る傷は数センチになる。ちつから摘出する方法もある。

 順天堂大産婦人科先任准教授の菊地いわほさんによると、直径10センチ(約400グラム)の筋腫だと器具を使えば約10分で摘出できたが、使わないと1時間ほどかかる場合もあるという。

 時間が延びると患者の体の負担が増え、手術室の確保も難しくなる。菊地さんは「腹腔鏡手術が可能な筋腫の大きさを、小さくせざるを得ない医療機関が出てくるだろう」と予測する。

 この器具を使った手術は年間約1万件行われてきた。同学会常務理事の塩田充さん(川崎医大産婦人科教授)は、「術前の検査を入念に行う日本では、米国が指摘したリスクは非常に少ないだろう。早急に全国調査を進め、術後に肉腫と判明した頻度などを確かめたい」と話す。

 筋腫による症状があっても、薬などで緩和できるなら、すぐに手術する必要はない。手術は、学会の調査結果や製品の流通状況の改善を待ってから検討するのも一つの考えだ。(中島久美子)

 
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