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石井苗子の健康術

yomiDr.記事アーカイブ

ストレス発散の旅なのに、逆にストレスがたまるとは

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(香港一人旅でカルチャーショック)

 旅行でストレスを発散させていらっしゃる方は、どのくらいいらっしゃるのでしょう。実は、私は旅行が大嫌いで、この年になるまで一人旅はまったくしたことがありません。ところが友人の旅行会社から激安ツアー参加を頼まれ、もしかしたらストレス発散になるかもしれないと期待して初めて体験してきました。

 イギリスから香港が中国に返還されたのは1997年7月1日です。5年後の2002年に聖路加看護大学(当時)の卒業旅行で行ったときは英語がよく通じました。今回一番驚いたことは中国語を話せないと不便だということです。この17年間で香港は中国語が日常語に定着しつつあるようです。ホテルから紹介されるようなレストランでも中国語しか話せないスタッフが多いことに驚きました。ビールを飲んだ後の私のコップにあっという間にジャスミン茶を注がれてしまっても、英語では何も通じないのであっけにとられるだけで、あとの祭りです。スタッフはまったく意に介していませんでした。帰国したら「聞き流し勉強法」で中国語を始めようかと思ったほどです。

 なぜ、あのような大声でテーブルで話すのかについても、話の内容が分からないとストレスがたまるばかりです。少しでも分かるようになればストレスが違うかもしれない。もしかしたら中国の方は、大声で話す伝統文化があるのか?とすら思い始めました。

 若者は比較的静かなのですが、ホテルのロビーで集まっている家族旅行者の大声は心の底から不思議に思いました。どうしてこの空間でそんな大きな声で話さなければならないのかと、しばらく風景を眺めてしまいましたが、なにも分かりませんでした。

 日本に留学をしたことがあるという男性のツアーガイドさんがついたのですが、食事時間はほっとかれるというスケジュールにびっくりです。朝、バスで複数のホテルを回って滞在客を拾うとおっしゃるので、私ひとりのために遅れてはならないと、スマホをにらみながら1時間の時差を計算して朝のおかゆを食べに外に出てお店をやっと見つけたら、すでに遅刻しそうな時間を現地時計がさしている。真っ青になって何も食べずに店を飛び出しスマホをみると自動的に香港時間に調整してあるではないですか。そんなことを勝手にやる機械なら大きな字で「香港時間に調整しました」とかアナウンスを出してくれないもんでしょうか。あるいは私が見落としたのでしょうか。便利なツールに冷や汗をかきました。

 また、大昔に使った地下鉄カードを再チャージしてくれるサービスはうれしかったのですが、エスカレーターはスピードが速く、やたら人々が忙しそうに見え、地下鉄内の横幅は日本より広いのですが、座席はスチール製でズルズル滑ってしまい居眠りもできないし、網棚もない。しかし考えてみれば日本の地下鉄のふわふわソファーの方がおかしいのかもしれません。日本では、通勤電車の座席に針が置かれ、乗客がけがをしたという事件がありました。居眠りをしてしまい、網棚に荷物を置き忘れると駅の遺失物取扱所に届けられたりして、あらためてよい国だなと思ってしまいました。

 免税品店で時間を潰すのがツアーのお約束なのですが、高価なバッグなど見て回っていて気が付いたことがありました。どうして日本の若者が無理をしてまでブランドを欲しがるかです。ローンで買う若者を批判する人もいますが、私が思うに、ブランド品が似合う年代は40代の働きざかりまでだからでしょう。お金に余裕ができたころには昔欲しかったバッグが似合わなくなっている。だから若者の気持ちはそれこそ「いつ持つの、今でしょ!」なんです。私がまっさらなブランドバッグをさげて歩いていたら、バッグだけ目立ち、持ち主は猫背で歩き方もノロノロしているという風景になってしまいます。

 代わりに「女人街」というところで1足100円のストッキングを60足ぐらい買いましたが、店員の愛想のなさにももう驚きません。これが普通の態度なのだろうと、異文化が楽しく感じられるようになりました。しかし、免税品店の中にある高級なソファーで持ち込みの食べ物を広げ水筒をラッパ飲みしながら、走り回る子どもに大声で注意をし、その子達も手になにか食べ物を持っていたりする買い物客には、腹が立つというより、どうしてなんだろうという興味を持ちました。「この人たちはお金を持っていることだけは確かなのだから、きっとこの態度でいいのだという自負がどっかにあるのだろう」と。免税品店の出入り口の階段のところに地面にベッタリ座って休んでいる人々もいましたが、前回ここに書いたように、「レリゴー、レリゴー」なのかもしれません「ありのまま、そのまま」です。

 世界の冷たい視線なんかどうでもいいわ、いっそ中国人のありのままのマナーで生きていく、なのかもしれません。

 ツアーガイドさんに日本のよい印象を尋ねると「静かであること、行儀がいいこと」とのお返事。香港はうるさくていやなのだそうです。しかも都心に近いと家賃が高く、マンションの部屋は狭く、地震が来ないからと超高層ビルが乱立している。古い建物はエアコンがすべて窓の外に設置してあるので、いつ落ちてきても不思議ではない。そういわれて見あげると、本当に危ない。落ちてきたら下にいる人は死んでしまうのではないかと思うほどです。新しいビルの工事現場の足場が竹で組まれていることにも驚きました。

 地震がないからなのか、昔からの伝統なのか、竹が余っているのか、技術に自信があるのか。中国の粉ミルクの汚染が問題になったときは、香港の子どもの分が足りなくなるほど中国本土の人に買い占められたそうです。ガイドさんのお話では、一番ほしいものは「安全な商品」。次にうその商品が並ばないような国にしたい。たしかに日本は、台風がきたらコンビニの傘の値段が10倍に跳ね上がったなんてことはありません。

 いろいろとカルチャーショックがあり、考えさせられる旅でした。

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石井苗子さん顔87

石井苗子(いしい・みつこ)

誕生日: 1954年2月25日

出身地: 東京都

職業:女優・ヘルスケアカウンセラー

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3件 のコメント

勘弁してーに、教師が分かっていないのだ

めざめたじいさん

 近所にある中高一貫校、入試はむずかしいというが躾はなってない。 通学路に当たっているので、通学時間帯は大騒ぎ。 学校に苦情を持ち込む人がいる。...

 近所にある中高一貫校、入試はむずかしいというが躾はなってない。
 通学路に当たっているので、通学時間帯は大騒ぎ。

 学校に苦情を持ち込む人がいる。それはお門違いだ。その場で注意するのが、社会人の勤め。

 機内で騒ぐ生徒に「静かいにしてくださいませんか」と言うべきだ。子どもは、学校だけでなく、地域社会が育てるもの。

 教師の目の行き届かない生徒たちの行動を知っているのは、生徒に接する人たちだ。

 どうしても言うことを聞かなかった生徒については、始めて教師に伝え、場合によっては保護者に伝えるのが筋。

 モルモルさん、その場で注意してください、生徒にも教師にも。

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勘弁してー

モルモル

私がストレスを感じる所といえば、それは国際線のフライトです。普段の生活でいやだなあと思ったら、なるべくそこを早く離れてしまいますが、長時間のフラ...

私がストレスを感じる所といえば、それは国際線のフライトです。
普段の生活でいやだなあと思ったら、なるべくそこを早く離れてしまいますが、長時間のフライトは逃げ場がないのでなかなかハードだと感じます。
ビジネスクラス以上に乗ればいいのですが、お値段突然跳ね上がるので、エコノミーでのると色々とストレスフルなことが。

何故だか泣き叫ぶ子供は大丈夫ですが、一番勘弁してよと思ったのは、夏休みの終わり、海外のサマーキャンプに参加した小学校高学年の一団。ベルトランプが消えると、子供達は夫々の友達の席へ大移動。しかも、通路ではなく、なぜだか、席のひじかけに足をかけ、背もたれを乗り越える空中戦を繰り広げて。
引率の先生はどこなの?とみると、先生、軽く注意するだけ。
私は注意して逆切れされたら怖いなあとなにもいえませんでしたが、欧米系の人たちがキレてました。でも直りませんでしたけどね。
あれはすごく旅のストレスでした。
この程度だからましかもしれませんね。

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大声で話す日本人も、近々に出現?

めざめたじいさん

 私も一人旅は絶対しません。ある友人は「旅の恥はかきすて」と、一人旅を愉しんでるようです。  50代で始めて外国に研修旅行に行きました。その時J...

 私も一人旅は絶対しません。ある友人は「旅の恥はかきすて」と、一人旅を愉しんでるようです。
 
 50代で始めて外国に研修旅行に行きました。その時JTBの添乗員から「周囲をよく見て、人の往来の邪魔をするな」と、忠告がありました。空港ロビーで集合するとき、人の通らない場所を選び、グループの中にいても周囲を気にするようになりました。

 30日間の研修を終え帰国すると、成田空港のロビーは、数人で固まって通路に立つ人が多く、旅慣れない島国の人々だと実感しました。

 近くの駅コンコースで声高に話をする高校生、嬌声を上げる女子中学生。酔客だろうかわめき散らすサラリーマン、はたまた暴走老人と嫌がられる爺さんが、スーパーの店員を怒鳴り飛ばす風景など、これが日本人かと思いたくないことばかりです。

 滅多なことでは、大声を出すな!と躾けられた私たちにはなじめないことが起こるでしょうか。まもなく、「ホテルのロビーで集まっている家族旅行者の大声」が、当たり前のことに。

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