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作家・作詩家 なかにし礼さん

一病息災

[作家・作詩家 なかにし礼さん]食道がん(1)満州からの逃避「自分で生きる」

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 「天使の誘惑」「今日でお別れ」「北酒場」。レコード大賞を3回受賞した売れっ子の作詩家だった。

 作家に転身して直木賞を受賞。執筆やコメンテーターとしての活躍を続ける。根底には、浮き沈みの激しい過酷な人生体験があった。その苦労から、心臓は発作を繰り返す。食道がんが見つかると、心臓の負担を考え、手術をしないで治す選択をして病魔と闘った。

 満州(現中国東北部)の旧ソ連国境に近い牡丹江で1938年(昭和13年)に生まれた。北海道・小樽から4年前に渡ってきた一家は造り酒屋を始め、裕福になっていた。「中国語やロシア語なども使って、他国の子供たちと遊んでいました。日本とは違って、軍国少年にはならなかった」

 45年8月、ソ連軍の侵攻で、生活は一変。母、姉との逃避行が始まった。現地を出る最後の軍用列車にまぎれ込んだが、ソ連戦闘機が迫ってきた。

 家族で逃げようとすると、母は「ここに隠れていなさい」と座席の下に潜り込ませ、自分は別に逃げた。列車は機銃掃射に襲われ、車内で多数の軍人が死んだ。戻ってきた母は惨状を見て、幼い息子に「これからは母さんの言うことも信じてはいけない。自分で逃げ、生きなさい」と諭した。

 「母のあの言葉に目覚めて以来、自分で考え、決断していくようになった。今も変わりありません」

 

 作家・作詩家 なかにし 礼(れい)さん(75)

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