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ビジネスマン向け1日瞑想体験

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「今ここ」に集中 すべて感受

僧侶を先頭に、街中でゆっくりと「歩く瞑想」を体験する参加者たち(東京都港区で)=松本剛撮影

 一昔前までは一部の人だけが関心を持っていた「瞑想めいそう」。最近は書店に一般向けの書籍があふれ、市民権を得た感がある。ビジネスマン向けの1日瞑想体験の催しに参加してみた。

 主催したのは、ベトナムの禅僧ティク・ナット・ハン師の来日招聘しょうへい事務局と、雑誌出版などを行う会社「エルアウラ」。会場は東京都内のホテルで、30~50歳代の48人が参加した。

 瞑想には様々な種類があるが、今回の特徴は「マインドフルネス(気づき)」だ。意味は「今この瞬間に、価値判断することなしに注意を向けること」で、米企業のグーグルも社員研修に取り入れている。

 指導するのはティク・ナット・ハン師の弟子の海外の僧侶5人。午前中はアジア地区僧院長のファプ・カムさんの法話を聞いた。

 「職場での会議中は、心も体も『今ここ』にしっかりとあることが大切です」

 「心が定まる前に行動してはダメ。気持ちが落ち着いてこそ、状況をしっかりと見ることができます」

 「ビジネスでも変化を受け入れないといけない。『無常』は世の常なのです」

 「『無我』とは、自分だけでは存在できない、という意味。他の幸せによって自分の幸せがあり、自分の幸せが他の幸せに貢献する。ビジネスも同じです」

 ビジネスマン向けの特別な瞑想法があるわけではない。「今ここ」に集中し、他者との関係性を理解し、常に冷静に変化に対応する――。ビジネスでも応用できる力を養えるのがマインドフルネスの瞑想だ。

 法話の合間に数回、「座る瞑想」を行った。背筋を伸ばして座り、呼吸に意識を向ける。結構難しく、すぐに雑念が湧く。でも、否定せずに見つめて受け流し、呼吸に意識を戻す。

 昼食は、用意された弁当。「食べる瞑想」だ。終始、無言でゆっくりと口に運び、最低30回かむ。食材一つ一つの味が驚くほど繊細に感じられた。

 午後は話し合いなどをした後、締めくくりは「歩く瞑想」。夕方、全員でホテルを出て40分ほど歩いた。

 足の裏と地面との接触を感じて歩く。息を吸いながら2歩、吐きながら2歩。速く歩く場合は3歩ずつでもいい。座る瞑想と同様、湧いてきた雑念や感情は静かに受け止め、呼吸や歩く感覚にそっと意識を戻す。

 時折吹く風が心地よい。鳥のさえずりや寺の鐘の音が聞こえる。トラックの騒音がそれらをかき消し、少し不快な気分が湧き上がるが、その感情も静かに見つめた。そのうち、ただ歩いているだけなのに心に充実感が満ちあふれてきた。

 なるほど。「今ここ」に集中し、いいことも悪いことも穏やかに受け止める習慣が身に付けば、きっと仕事にも役立つだろう。

 参加した横浜市の道端みちはな真紀さん(47)は、IT系企業に勤務し、仕事と子育てに追われていたという。ある時、深く呼吸していない自分に気づいた。「水槽の中でパクパクしている酸欠の金魚と同じだ」。悲しくなり、昨年夏に退職。今回、初めて体験した瞑想の感想をこう語った。

 「昔の自分を思い出す感じがした。自分を変えるのではなく、自分に帰ればいいんだ、と気づきました」

 仕事で疲れているあなたも、通勤途中やランチの間に、呼吸にちょっと意識を向けてはいかが?(山口博弥)

 ティク・ナット・ハン師 1926年、ベトナム生まれ。フランスに創設した仏教共同体「プラム・ヴィレッジ」で生活し、マインドフルネスを法話や著書で世界中に伝える。来年4~5月に来日する予定。詳細は招聘事務局のサイト(http://www.windofsmile.com/)に載っている。

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