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記憶力向上 オメガ3系脂肪酸

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「恐怖の記憶」低減する可能性

オメガ3の扁桃体への影響などを調べる関口さん(右)と山田さん(国立精神・神経医療研究センターで)=佐藤光展撮影

 記憶力アップなどの効果が知られるオメガ3系脂肪酸が、様々な精神疾患につながる「恐怖記憶」の軽減にも役立ちそうなことが、国立精神・神経医療研究センターの調査で分かった。精神疾患の新たな治療法につながる可能性がある。研究者を取材した。

 オメガ3はイワシやサバなどの青魚に多く、植物性の油に多いオメガ6と並ぶ代表的な多価不飽和脂肪酸。読解力や記憶力の向上、情緒の安定などのほか、中性脂肪を下げる効果が注目され、オメガ3を主成分とした高脂血症治療薬が登場している。

 精神疾患の予防や改善効果も期待されてきた。

 うつ病発症率と魚の消費量を比べた調査では、消費量が多い国ほど発症率が低い傾向があり、調査対象の国では日本が最も低かった。ただ、これは1998年の調査で、日本では以降、製薬会社のうつ病啓発キャンペーンなどの影響で患者が急増したため、同様の調査を改めて行うと違う結果が出るかもしれない。

 人前で過度に緊張する社交不安障害や、人混みなどを恐れる広場恐怖などの不安障害にも、オメガ3の効果が期待される。

 不安障害の患者は、血液中のオメガ3の濃度が健康な人より低いことなどが海外の研究で分かったためだ。同センターはこうした結果に注目し、恐怖記憶がオメガ3の摂取で薄らぐかどうかを、マウスで調べ始めた。

 手順を簡単に説明しよう。まず、オメガ3と6を加えた餌(マウスごとに含有量を変えたもの)を6週間、マウスに食べさせた。続いて1匹ずつ別の場所に移し、電気刺激を1秒ほど加えて戻した。24時間後、マウスを再びこの場所に入れると、電気刺激を恐れて体をすくめ、動かなくなった。この状態で3分観察。すくみ状態がどれほど続くかで、恐怖記憶の軽重を評価した。

 その結果、マウスが動き出すまでの平均時間は約30秒~約1分。最大2倍のばらつきが表れ、オメガ3を多く摂取したマウスほど、すくみ状態を早く脱した。だが、オメガ3と同時に6も多く摂取したマウスは効果がなかった。同センター疾病研究第四部室長の関口正幸さんは「オメガ6が3の効果を打ち消すのではないか」とみる。

 関口さんは、研究員の山田大輔さんとともにさらに、恐怖記憶に関係するマウスの脳の扁桃へんとう体を調べ、オメガ3が働くメカニズムを明らかにした。摂取したオメガ3は、扁桃体の神経細胞を覆う細胞膜に取り込まれ、代わりにコレステロールを追い出す。すると、神経細胞の過剰な興奮を抑える機能が高まり、恐怖記憶が抑制されるというのだ。

 では、オメガ3と6はどのくらいの割合で摂取すればいいのか。1対1から1対4という説もあるが、はっきりしない。日本の食生活では、1対7や1対10になるとされ、オメガ6が過剰なことは間違いない。しかし、悪玉と見られがちなオメガ6も、不足すると体に悪い。

 関口さんは「青魚を意識して多く食べても、オメガ6が多いスナック菓子を1袋食べると、オメガ3の効果がなくなってしまう。二つの脂肪酸を偏りなく摂取することが大切。さらに研究を進め、不安障害などの治療につなげたい」と話している。(佐藤光展)

 多価不飽和脂肪酸 食事で取ることが必要な必須脂肪酸。ドコサヘキサエン酸やエイコサペンタエン酸などのオメガ3系と、リノール酸やアラキドン酸などのオメガ6系が知られ、細胞膜の材料になる。

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