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聴覚障害者、対人関係で 緊張感

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「聞こえている」誤解が苦痛

小島さんは中途失聴・難聴者「つばさの会」立川の代表。仲間とは手話、筆記など様々な方法でコミュニケーションをとる

 難聴者や中途失聴者ら聴覚障害を持つ人は、対人関係で、緊張や不安、疎外感を抱きやすい。健聴者の誤解が根強く、障害が理解されにくいことも一因。「本当は、聞こえているんでしょ」と疑われることもある。

 40歳代で聴力を失った東京都立川市の小島敦子さん(54)は「はっきり話せても、高齢者でなくても、聞こえない人がいることをまず、知ってほしい」と訴える。

 小島さんは小さい頃から難聴を抱えていた。徐々に聴力は低下、3人の育児に追われた30歳代には、騒がしい場所や、複数での会話は不自由になった。

 特に高い声が、言葉として聞き取れなかった。学校行事では、会話が続く男性の輪に入り、母親たちから不審な目で見られた。

 そんな時、聞こえづらさを説明しても、信じてもらえなかった。なめらかに話せたし、聞こえるふりをする癖がついていたからだ。

 聞き返すと、場がしらけてしまったり、「たいした話じゃないから」とかわされてしまったり。そんな経験を繰り返し、聞こえなくても、場の雰囲気に合わせて過ごすようになった。

 笑いが起これば、一緒に笑っても、内心は孤独で、いつ話を振られるかと、緊張していた。

 トラブルも絶えなかった。的はずれな返事をして困惑されたり、「その場にいたからわかったはず」と思いこまれ、後日、約束を破ったと責められたり。2002年に完全に聴力を失った後も、「聞こえているんでしょ」と疑われた。苦痛で、引きこもった時期もあった。

 11年3月、神経に音を電気信号として伝える人工内耳を埋め込む手術をうけた。今は、静かで、少人数のやりとりなら、半径1メートル以内の距離では普通に会話ができる。手話や、筆記、唇の動きを読み取るなど様々な方法で会話をする。

 琵琶湖病院(大津市)で聴覚障害者専門の外来を担当する精神科医藤田保さん(65)は「聴覚障害は、周囲の人との間に障壁を作る深刻さがある。安らげるはずの家庭も、居心地が悪くなってしまう」と話す。藤田さん自身、29歳の時、病気で失聴した。健聴者と共に暮らすストレスを、身をもって知る。

 今年2月、聴力を失った作曲家として話題を集めていた佐村河内守さん(50)が、他人に作曲を依頼し、聴力が残っていることも明らかになった。

 身体障害者手帳の対象でなかったことなどから、「問題なく聞こえているのでは」との声もあがった。日本の聴覚障害認定の基準は厳しく、手帳がなくても聞くことに不自由している人はたくさんいる。

 藤田さんは「(今回の問題への)一連の世間の反応から、改めて、健聴者が聴覚障害を誤解していることを思い知らされた。対人関係のストレス軽減のためにも、正しい理解を求める良い機会にしたい」と話している。(中島久美子)

 

 聴覚障害 身体障害者手帳取得者は全国で推計24万人。発症した年齢や程度により、言葉を話し始める時期までに重い難聴となる「ろう者」、ある程度の聴力が残っている「難聴者」、言葉を覚えてから失聴した「中途失聴者」などがあるが、明確な区分はない。

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