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茂木健一郎のILOVE脳

yomiDr.記事アーカイブ

ダイエットへの動機付けを模索中

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 私の体重は、相変わらず一進一退しているようで、今量ったら、82.5キロであった。

 増えてもいないけれども、減ってもいない。

 要するに、横ばいである。

 先週も似たようなことを書いたばかりであるが。


「軽めの朝食ダイエット」

 さて、あまりにも、ダイエットをサボっているのも何なので、私が生み出した、「朝食を軽めのフルーツヨーグルトにして、昼食までに十分におなかかせる」という減量の方程式を、実行してみることにした。

 しかし、毎日というのも疲れるので、できる時にやることにした。

 つまり、私の計算はこうである。「軽めの朝食ダイエット」を、毎日でなくても、とにかく時々やる。すると、10日やれば10日分の、20日やれば20日分の、100日やれば100日分のダイエット効果があるだろう。

 そこで、2日連続で、フルーツヨーグルトだけの朝食にした。正確にいえば、そこに、納豆1パックを(ご飯なしで)食べるというオプションを付け加えた。

 今、この原稿を書いているのは、フルーツヨーグルト+納豆の朝食をとってから、1時間くらいった時点でのことだが、すでにお腹が空いている!

 この調子! 初心に戻って、しばらく、朝食ダイエットをやってみたい。その結果がどうなるか、この項でみなさんにご報告します!


 さて、前回、「私には痩せたいという動機付けが、そもそもないのかもしれない」と書いたら、いろいろな方から反響をいただいた。

 その中には、「本当に大切な方から、痩せた方が好きと言われたら、その気になるかも!」という意見もあった。

 うーむ。大変すてきなご意見だと思うのですが、私の周りには、そんなことを言ってくれる人もいないし、そもそも、私自身の中に、そういうことを気にしよう、という感覚がないようなのです。

 これは、ジェンダーの問題にもつながる深い話だと思うのだけれども、どうも、私には、人からこう見られたい、という気持ちが希薄らしく、「痩せた方がより格好良くなる」というような動機付けは、心の隅々までほこりをはたいて探しても、なかなか見つけられないようなのであります。


敏捷に動く「奇跡のデブ」

 強いて、私が、「痩せた方がいいかも」と思う、その動機付けを探すとすれば、自分の「身体イメージ」ということになるのかもしれないのです。

 私は、小太りの割には、敏捷びんしょうに動く「奇跡のデブ」といわれているが、その理由は、小学校の頃から、一貫して走っているからである。

 昨日もその前の日も、近くの公園を、スマートフォンについているランニング支援アプリを用いて、走った。時々立ち止まって、再び走り出す、いわゆる「インターバル・トレーニング」のようなこともした。 

 最近のアプリは便利で、ランニング中、信号待ちなどで止まると、自動的にストップウォッチを止めてくれるのである。GPS(全地球測位システム)を用いて、ランナーが止まると、それを検出する仕掛けが入った優れ者なのだ。

 走っている時に、ふと思うことがある。私は、今でも十分運動を楽しんでいるけれども、ひょっとしたら、もう少し体重が減っていたら、違った感覚で軽やかに走れるのではないか。

 たとえば、私のランニングコースには、公園のスロープを一気にかけ上がる、という部分があるのだけれども、その時に、かなり息が上がる。心臓がどきどきする。それは、コースが厳しいせいだと思っているけれども、ひょっとしたら、体重がもう少し軽ければ、さっと涼しい顔で駆け上がることができるのではないか。


「新しい身体の地図」を手に入れるには

 他人からもっと格好良く思われたい、という動機付けはほとんどないけれども、公園のスロープを、軽やかな涼しい顔で駆け上がってみたい、という気持ちはある。ひょっとしたら、私の場合、そのような「未知なる身体イメージ」への好奇心を手がかりにした方が、痩せる動機付けができるのかもしれない。

 脳の回路の中で、身体イメージをつくっているのは頭頂葉で、ここで、自分はこんな身体だという「地図」のようなものを作っている。

 ひょっとしたら、私は、今の小デブな身体の地図をもとに世界の中で動いていて、そのせいで、知らずしらずのうちに、行動を制約されているのかもしれない。

 新しい地図を手に入れたら、もっと違う自分に出会えるのかもしれない。

 「新しい身体の地図」を手に入れて、あの公園のスロープを、軽やかに駆け上がってみたい。

 そんな気持ちは大いにある。あこがれの、スロープ駆け上がりボディー。格好いいと言われなくてもいいけれども、子鹿のように、スロープを駆け上がってみたい。

 どうやら、私にも、痩せるための動機は、そのあたりに見つかりそうだ。

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茂木 健一郎(もぎ けんいちろう)
脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。1962年、東京生まれ。東大大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。クオリア(感覚の持つ質感)をキーワードに脳と心を研究。最先端の科学知識をテレビや講演活動でわかりやすく解説している。主な著書に「脳の中の人生」(中公新書ラクレ)、「脳とクオリア」(日経サイエンス社)、「脳内現象」(NHK出版)、「ひらめき脳」(新潮社)など。

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