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原記者の「医療・福祉のツボ」

コラム

医療のかかり方(7)こんな医師は避けよう

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 ドクターの選び方を、今回はいったん、逆の方向から考えてみましょう。

 こんな医師にかかるのは、なるべくやめよう、と決めるための手がかりです。裏返しにすると、良い医師を見つけるヒントにもなるはずです。


× 患者を「見ない」医師

 このごろは電子カルテが増えてきたこともあり、検査データをチェックしてパソコンに入力しながら、横目で患者を見るだけ、という医師もいます。忙しさも一因でしょうが、それでは対話も不十分になりがちだし、患者の心身の状態をきちんと観察できません。

 診察の基本は、観察と問診。まずは表情を含めて、患者をしっかり「見る」ことです。そこに、いろいろな情報があるからです。

 患者の体に触れるのを敬遠する医師もいるようです。聴診器を当てる、のどを観察するといったことを含め、体に触れることは、一般的には「しっかり診てくれている」という安心感を患者にもたらす効果もあるものです(セクハラ・わいせつはいけませんが……)。

 東洋医学の医師の場合は、顔色や舌の状態をよく見て、声を聞き、体臭や口臭にも注意しながら、手首などの脈にも必ず触れて、診断を進めます。


× 質問しない医師

 問診とは、どんなふうに具合が悪いのか、いつからどんな経過でそうなったのか、患者から聞き取ることです。まあ、それぐらいはたいていの医師が尋ねるでしょう。

 ただし、簡単に診断がつかないこともよくあります。そこですぐに「検査してみましょう」となるのは、順番が違うかもしれません(診療科にもよりますが)。

 生活上のできごと、住宅の環境、暮らしの状態、労働の状況、精神状態など、いろいろなことを、あれこれ立ち入って質問してくる医師のほうがいいのです。

 たとえば、アウトドア活動を最近したかどうかを尋ねることで、植物によるアレルギー、ダニによる感染症、水辺にいる寄生虫などが原因ではないかと気づくことがあります。

 海外旅行をしたなら、日本には通常みられない感染症かもしれません。

 住宅の様子を尋ねることで、シックハウスが不調の原因とわかることがあります。

 日々の仕事の様子を尋ねて、客観的に見てハードワークすぎるなら、本人が自覚していなくても、ストップをかけるべきかもしれません。

 心理的な要因によって身体に不調が表れる病気(心身症)も、たくさんあります。

 患者自身では想像の及ばないことを、質問によって発見できるわけです。

 診断は、さまざまな情報をもとに「この病気の可能性が高いだろうか」「あの病気は否定されるだろうか」と推理・判断していく作業です。

 ろくに質問しない医師は、情報を得ようという努力が足りないか、可能性を探るときの視野が狭いのではないでしょうか。

 治療をうまく進めるためにも、生活面の把握は重要です。たとえば、毎日忙しすぎて薬をきちんと服用できないなら、どうすれば服薬しやすくなるかをサポートする必要があります。


× 説明しない医師

 私は以前、背中にできものができて、ある病院の皮膚科を受診しました。すると、診察した医師がいきなり「次回、手術しましょう」と言うのです。そばにいた看護師が「先生、これは何の病気ですか?」と無知なふりをして助け舟を出してくれ、やっと病名を伝えられましたが、そこで手術を受けるのは結局、やめました。

 そこまで説明しないのは極端でしょうが、「○○病です」と結論を言うだけの医師は、イマイチです。あてずっぽうではないとしても、「勘」による診断かもしれません。

 「こうこう、こういう理由で、○○病だと思います」「こういう理由で、××病の心配はないでしょう」と、診断のプロセスを説明されるほうが、患者は納得できます。

 はっきりした診断がつかないことも、よくあります。そんなときは「よくわかりませんねえ」と言える医師がよいのです。わからなければ、次のステップとして何らかの検査をするか、専門医に紹介するか、しばらく様子を見るか、でよいわけです。

 治療方針や薬の処方の説明についても、同様のことが言えるでしょう。


× 風邪に抗生物質を出す医師、すぐステロイドを出す皮膚科医師

 風邪症状は、さまざまな病気で起きうるので、しっかり診断できたら一流のドクターです。

 しかし「普通の風邪」と診断したなら、ウイルスが原因なので、西洋医学で根本的に効く薬はありません。症状を和らげる薬だけです。

 それなのに、抗生物質をはじめとする抗菌薬を処方する医師が、まだ一部にいます(以前より、かなり少なくはなりました)。

 抗菌薬は、細菌をやっつける薬です。細菌とウイルスはまったく別もの。ウイルスに抗菌薬は効かないうえ、服用によって副作用が生じる可能性があり、薬剤耐性の細菌を増やすことにもなります。

 皮膚科の場合、かゆみがあるというだけでステロイドの塗り薬をすぐに出す医師は避けたほうがいいですね。ステロイドを使うなら、きちんとした診断と治療方針に基づいて使うべきです。ステロイドを塗ると免疫力が下がるので、病気によっては逆効果になることもあります(疥癬(かいせん)など)。


× いばる医師

 昔に比べるとずいぶん減りましたが、偉そうな態度で物を言う医師、しょっちゅう患者を叱りつける医師は、患者にとって不快です。辛抱しないで、受診をやめてかまわないでしょう。

 そういう診療姿勢そのものが時代遅れであって、現代の医療のあり方を勉強していないことを示しているからです。

 もし、迷惑もかけていないのに患者を医師が叱るとすれば、このままの生活を続けると大変なことになりますよ、と親身になって緊急に警告する場合ぐらいでしょう。

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原昌平20140903_300

原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。社会福祉学修士。大阪府立大学大学院客員研究員。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

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