百寿者こぼれ話
からだコラム
[百寿者こぼれ話]雑談も楽しみな聞き取り
百寿者研究をしていると、どうすれば元気で100歳まで生きられますかとよく聞かれます。どんな食事が良いのか、運動はどの程度するべきなのか、などです。残念ながら百寿者を調べるだけでは、このような質問に正確に答えることはできません。50年前の食事を聞かれても、思い出せませんよね。
私たちの研究の目的は、もちろん健康長寿の秘密に迫りたいということですが、ヒトが年をとるとどうなるのかを知ることも、大切な目的の一つです。例えば、年をとると誰でも認知症になるのか、自立しているのか、幸せなのか、などを知ることです。
百寿者の方のなかには、1時間程度の調査を受けることができない方もおられます。そうすると生活歴、認知機能、性格に関する質問に答えることができません。また、百寿者では幸せ感が高かったとしても、それは百寿者に特有なものかどうか調べる必要があります。つまり誰かと比較しないと百寿者の特徴は分かりません。
一番良いのは同じ年に生まれて100歳になる前に亡くなった方ですが、そのような方を調べることはできません。そこで70、80、90歳の調査(SONIC研究)、85歳以上の方の調査(TOOTH研究)などが行われています。
大阪の106歳の女性の方を調査した時のことです。いろいろお聞きしたのでご機嫌が悪くなってしまいました。そこで調査員が雑談を始めました。「私は美男子ですか?」「そんなことよう言えんわ」「ここの食事はおいしいですか?」「そんなことよう言えんわ。でも、おいしいと思って食べな、食べられんがな」。ちなみに、施設ではとてもおいしそうな料理が出ていました。
こんな楽しい方たちに会えるのが楽しみで調査をしています。(広瀬信義・慶応大特別招聘教授)
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