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多様化する家族 社会と「心の壁」

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受け入れるには「理解」から

「安心できる家庭を作りたい」。同性カップルの東さん(左)と増原さん=立石紀和撮影

 「普通の家族」とは何だろう。夫婦と子ども2人? 実際は、そんな枠にはまらない家族も多いが、多様な形が受け入れられず、生きにくさを感じる人もいる。どうしたら、「心の壁」を乗り越えられるのだろう。

 4月に公開された米映画「チョコレートドーナツ」。男性同士のカップルとダウン症児が、家族になろうとする物語。なじみの薄いテーマとみられるかもしれないが、日本にも、親になりたい同性カップルが増えているという。

 昨年3月、東京ディズニーシーで結婚式を挙げた東小雪さん(29)、増原裕子さん(36)も子どもを迎える準備中だ。2人はレズビアンで、同様の立場にあるLGBTの支援活動をしている。同性カップルが子どもを持つための課題に向き合った「ふたりのママから、きみたちへ」(イースト・プレス)も出版した。

 日本で同性婚は法的に認められず、同性カップルは里親になることもできない。精子提供を受けて出産するにしても簡単なことではなく、いじめなど子育て中の不安もあった。「先のことが心配で泣いたこともあるけれど、よく話し合い、文章にするうちに気持ちが固まった。安心できる家庭を作りたい」と東さん。

 すでに子育てをしている同性カップルの家庭もある。東京都の小野春さん(42)は、同性パートナーと互いの実子を連れて「再婚」。「同性婚」であり、「子連れ再婚」でもあり、多様化する家族像を体現しているようだ。

 子どもたちもそんな2人を受け入れ、家庭生活は9年続く。ただ、どう思われるか不安で、一部の人にしか2人の関係は話していない。「世の中にはいろんな人がいて、いろんな家族の形があるのに、特にセクシュアル・マイノリティー(性的少数者)の家族は、まるで社会にいないかのようになっている」。小野さんは疑問を投げかけた。

 実際、理解を得られずに苦しむ人がいる。子どものいる、ある女性のカップルは、会社が「結婚」とみてくれず、一人が単身で海外赴任を強いられ、家庭が崩壊した。同性パートナーを持つある女性は、相手の産んだ子の育児と仕事の両立が職場で理解されにくく、悩んだ末にうつになった。

 しかし、家族の多様化は進んでいる。昨年12月、性同一性障害で女性から性別変更した男性が、第三者の精子を使った人工授精で妻が産んだ子を法律上の実子と認めるよう求めた審判で、最高裁が訴えを認めた。一般の夫婦でも、生殖補助医療の進歩で家族関係は複雑化。事実婚の夫婦や、一人親の家庭もある。

 「元来、家族の形態はあいまいで緩やかだったが、国家や戸籍制度など社会形成の中で概念が狭められ、血縁を強調する単位になった」と、大阪大准教授(臨床哲学)の本間直樹さんは解説する。規格化された家族のイメージにとらわれた現代人が、多様性を受け入れるために何が必要なのか。

 本間さんは「習慣が異なる他人同士がともに暮らし、子を育てる苦労は誰にとっても同じ。マイノリティーが生きにくい社会は、そうでない人にとっても生きにくい。個々の家族が分断され孤立化する中、隣同士でも家を開きあい、助けあえるよう交流することが必要ではないか」と指摘している。(高梨ゆき子)

 

 LGBT Lesbian(レズビアン=女性同性愛者)、Gay(ゲイ=男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル=両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー=心と体の性が一致しない人)の頭文字を組み合わせた略語で、性的少数者の総称。電通総研が2012年、20~59歳の男女7万人を対象にした調査によると、該当者は全体の5.2%。日本でも自ら公言し、社会に発言する人が徐々に増えている。

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