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抗HIV薬 次々と開発…早期治療 エイズ発症抑制

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 国内に約2万3000人いると報告されているHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者とエイズ患者。近年、エイズ発症を抑える抗HIV薬が次々と開発され、早期に治療を始めれば日常生活を支障なく送れるようになった。一方で、検査を受けずにエイズを発症し、深刻な病状に至ってしまうケースもまだ多い。


 HIVがヒトの免疫細胞に侵入すると、通常、遺伝情報がDNAからRNAに複製(転写)されるのとは逆に、ウイルスのRNAから酵素の働きでDNAが合成される(逆転写)。これがヒト細胞のDNAに組み込まれると、ウイルスのRNAとたんぱく質が作られ、新たなHIVを生み出す。

 感染した細胞は数日で破壊され、徐々に免疫機能が低下。通常なら排除できる細菌やウイルスにも感染しやすくなる。HIVの増殖を抑えなければ、肺炎や悪性腫瘍を発症するエイズに至る。

 厚生労働省エイズ動向委員会の速報値では、昨年の新たなHIV感染者の報告数は1077人、エイズ判明は469人。近年、計1500人前後で推移している。感染の可能性の有無をふるい分けるスクリーニング検査、疑陽性を除外する確認検査を経て診断する。

 エイズが発見された30年前は不治の病だったが、HIVが増殖する過程をブロックする薬が相次いで開発された。現在は複数の過程で阻害する「多剤併用療法」が主流だ。

 いったんHIVに感染すると体内のウイルスは死滅させられない。エイズ発症を防ぐために薬を生涯飲み続けることになるが、国立国際医療研究センター(東京都)のエイズ治療・研究開発センター長、岡慎一さんは「きちんと服用を続ければ、ほぼ確実に発症を抑えられ、他人への感染も防げる」と強調する。

 薬には、ウイルスのRNAからDNAが作られるのを妨げる「逆転写酵素阻害薬」、ウイルスのDNAがヒトのDNAに組み込まれるのを抑える「インテグラーゼ阻害薬」のほか、ヒト細胞への侵入を防ぐ薬や新たなウイルス合成を防ぐ薬がある。

 国内では20以上の薬が承認されており、2種類の逆転写酵素阻害薬をベースに、それ以外の薬を組み合わせ計3種類を飲むのが標準的だ。「1日1回1錠」「1度に2錠」「1日2回」「食後・食間の服用に限られる」「他の薬物との飲み合わせに注意が必要」など、様々な特徴がある。

 薬の多くは1・5センチ超と大きいのがネックだ。発疹や脂質異常、下痢など副作用も比較的出やすい。ただ、服用を怠るとエイズ発症のリスクが増すことから、より飲みやすい薬の開発が望まれてきた。

 4月に発売された「ドルテグラビル」は、インテグラーゼ阻害薬の一つで、1日1回1錠を他の薬と併用する。食事のタイミングを気にせずに飲め、錠剤も直径9ミリと小さめだ。抗ウイルス効果も従来の薬と同等以上で、他の薬への影響も比較的少ない。

 薬が進歩し、専門医らは「HIVは治療で管理できる慢性感染症」と捉えるようになった。一方、エイズへの根強い偏見や恐れが、検査から足を遠のかせている。岡さんは「実際の感染者は3万人とも5万人とも言われるが、実態をつかめなければ制圧できない。検査体制を根本から見直す時期が来ている」と話す。(佐々木栄)


HIV=Human Immunodeficiency Virus

 
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