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浦上克哉・鳥取大医学部教授講演「認知症予防の最新情報」

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講演(3)アルツハイマー、治療薬と「接し方」で進行予防

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アルツハイマー型認知症、4種類の治療薬

 アルツハイマー型の認知症には有効な薬が4種類あります。

 以前は、アリセプトという薬だけだったのですが、3年ほど前からレミニール、リバスチグミンパッチ、メマリーという薬が出て来て、治療薬の選択肢が随分増えてきました。

 アリセプト、レミニール、リバスチグミンパッチは同じ系統の薬(コリンエステラーゼ阻害薬)なので、一緒に使うことはできません。この3種類の中のどれか1種類を選んで使っていただくことになります。

 メマリーという薬は、この3種類とは別系統の薬(NMDA受容体拮抗薬)なので、一緒に使うことができます。例えば、メマリーとアリセプトを一緒に使ったり、メマリーとレミニールを一緒に使ったりすることができます。アリセプト、レミニール、リバスチグミンパッチは、コリンエステラーゼ阻害薬と呼ばれ、アセチルコリンという物質を脳の中で増やす働きがあります。アルツハイマー型認知症になりますと、アセチルコリンという物質が減ってきます。アセチルコリンが減るたびに、物忘れが起こってくるのです。減ったアセチルコリンを増やすことによって、記憶を改善させる働きがあります。


飲んでも変わらなくても…進行抑制の可能性

 アリセプトには5割ほどの「改善」例がありますが、「不変」例は35%になります。この35%をどう考えるかということですが、従来の薬では、「不変」例を効果がないと考えるのですが、アルツハイマー型認知症のように、ゆっくりと徐々に進行してくる病気の場合には「不変」であっても進行を抑制できている可能性があるのです。ですから、「不変」例も一概に「効果がない」とは言えないのです。

 治療現場で「飲んでいても変わりがないので、やめてもいいでしょうか」と聞かれる方がいるのですが、「不変」であっても「効果」のうちである可能性がありますので、安易に服用をやめないようにしていただきたいのです。

 リバスチグミンパッチは、レミニールやアリセプトと同じ系統のコリンエステラーゼ阻害薬ですが、違いは貼り薬だということです。これを胸や背中に貼ると、効果が出ます。最初は4.5ミリグラムの貼り薬から始めて、少しずつ増量していって、18ミリグラムというのが最終的な常用量となります。18ミリグラムになると、500円玉よりもちょっと大きいぐらいです。

 メマリーは、コリンエステラーゼ阻害薬と併用することができるのですが、病気がある程度進行した人に対して使うことができる薬です。例えば、アリセプトを使っていて、病気が少し進行してきたような場合に、メマリーを追加すると、効果が上がってきます。

 このように、薬の選択の幅は広がっているのですが、残念ながら、まだ根本的にアルツハイマー型認知症を治せる薬はありません。


「物事がわからない人」ではない…患者本意の接し方を

 治療現場で重要なのは、患者さんとの接し方です。

 これまで、認知症の方に対しては、間違った接し方をしてきたのです。

 「認知症なので、物事がわからない」と決めつけてしまって、ご本人から話を聞かずに、勝手に周囲の人が治療法を決めてしまうケースが多いのですが、認知症の人は、記憶力は落ちているけれども、他の機能はかなり残っているのです。ですから、ご本人の気持ちをよく聞いたうえで、病気の治療をしてあげることが大事だということです。

 私が経験した例ですが、患者のおじいちゃんに認知症の薬を出したところ、食欲がなくなったということでした。薬の副作用だと、その時は判断されたのですが、薬をやめてみても、一向に食欲が改善しません。がんの精密検査も行いましたが、悪いところは見つかりませんでした。

 私は、改めておじいちゃんとお話しした結果、ご家族に「ごちそうを食べに連れて行ってください」とアドバイスしました。すると、ご家族が、フランス料理を食べに連れて行ってくれました。おじいちゃんは「とてもおいしい」と言って、料理を食べたということです。

 おじいちゃんは私に「配食サービスのお弁当がおいしくないから、食べないんだ」と言っておられたのです。食べたくないから食べなかったので、別に食欲がないというわけではなかったのです。周囲の方は、残っているお弁当だけを見て、勝手に「食欲がない」と判断されましたが、ご本人に理由を聞いていなかったのです。

 これは、典型的な悪い対応例です。

 患者本意の接し方をしてあげることが、重要だと思います。

 早期の薬物治療や、対応の仕方によって、認知症の進行を予防できます。病気の発症を防ぐことだけが予防だと思っておられる方が多いと思いますが、ひとたび病気になられた方の病気の進行を防ぐことも重要な予防であると考えます。

 
浦上克哉(うらかみ・かつや)さん

 鳥取大学医学部教授、認知症予防学。1956年生まれ。鳥取大学医学部卒。同大学医学部脳神経内科などを経て、同大学大学院医学系研究科保健学専攻・病態解析学分野教授。アルツハイマー型認知症および関連疾患を専門とし、診断マーカーの開発研究、外来での診察と治療、ケアなど総合的に認知症と取り組んでいる。著書に「認知症 よい対応・わるい対応―正しい理解と効果的な予防」(日本評論社)、「認知症は怖くない18のワケ」(JAF MATE社)など多数。


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