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宋美玄のママライフ実況中継

医療・健康・介護のコラム

「出生率2.07回復」少子化対策で目標必要か

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広い新宿御苑で30センチ以内しか目に入っていない娘

 日本全国ゴールデンウィークですね。前半は新宿御苑にピクニックに行ったり、友人たちが子連れで遊びにきたりして、娘は大はしゃぎ。興奮しすぎてか、夜はなかなか寝てくれず、朝は早々と「おっきする~」と親をたたき起こすので全く仕事ができません。しかし、おむつもズボンも自分ではけるようになって、「すごいすごい~」と拍手するだけでよくなったので楽チンです。

政府の少子化危機突破タスクフォース佳境に

 委員として参加している内閣府の少子化危機突破タスクフォース第2期も佳境に入ってきました。先週の会議では、少子化対策をするにあたって数値目標は必要か、目標を設定するならどのような数値が適切かということも議題になりました。

 よく使われる数字は合計特殊出生率で、これは15~49歳の女性の年齢別出生率を合計したものです。細かい話ですが、ある年の各年齢(15~49歳)の女性の出生率を合計したものである期間合計特殊出生率と、同一年生まれ(コーホート)の女性の各年齢(15~49歳)の出生率を過去から積み上げたコーホート合計特殊出生率があり、「1人の女性が一生に産む子どもの数」はコーホート合計特殊出生率の方です。

 しかし、その世代が50歳になるまでコーホート合計特殊出生率は算出できないため、期間合計特殊出生率を用いることが多いです(ちなみに「生涯未婚率」は50歳まで未婚である率であることも会議に出席して知りました。人口学的には50歳以降で結婚してもカウントする意味はないということだそうです)。

 出生率の分母は「女性1人当たり」であるため、生殖年齢にある女性からするとノルマを課されているように感じる、女性から反発を招きかねないとの慎重な意見が出されました。このことに関しては専門外で、単に生殖年齢の一女性としての意見ですが、出生数を目標とするか、男性を分母とした出生率の併記(人口学的には意味がないそうですが、社会学的には興味深いと思いました)でもいいのではないかと個人的には思いました。

人口保つギリギリの出生率、なぜ新聞の見出しに

 会議では数値目標が設定されなければ具体的な政策について議論できないとの意見も相次ぎ、森まさこ少子化担当大臣が「目標を設定するかしないのか、設定するとしても数字なのか、数字だとしてもどのような数字なのか、様々な論点があると思う。今日も議論が多岐にわたったので場を設けて議論したい」と述べられました。

 翌日の新聞には「『出生率2.07回復』政府会議が検討開始」と、まるで出生率2.07を目標として議論しているかのような見出しが。2.07というのは人口置換水準といって、人口を今の状態に保つギリギリの出生率ですが、会議ではその数字はちらりと出てきたものの「やっぱり出生率は2.07必要でしょう」のような議論には全くならなかったため、なぜこの数字が大きく取り上げられているのか分かりませんでした。女性の「ノルマ」になったり、個人の選択に介入したりすることにならないように非常に慎重に議論されていたので、報道を見て、だいぶ印象が違うなと感じました。

産むか産まないかは個人の選択だが…不足の認識も必要では?

 子どもを産むか産まないかは個人の選択であると同時に、個人やカップルの努力だけで思い通りになるものではありません。出生数であろうと出生率であろうと数値目標を設定されることに敏感になる人も多いと思います。しかし、数値目標がなければ具体的な政策が取られないだけでなく、子づくりに関与しない層に少子化や急激な人口減少が国民全体の問題だと認識されにくいと思います。まだまだ子どもを産み育てやすい国とは言えない現状で、子育て世代以外にも「どのくらい子どもが不足しているのか」を認識してもらうためにも、私は数値目標の設定は必要ではないかと考えています。みなさんはどう思われるでしょうか。また会議の内容をこちらのブログで報告して行きたいと思います。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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10件 のコメント

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せめて10年前にやってほしかった

ぱんだ

私は、現在二人目妊娠中の39歳です。いわゆる第二次ベビーブームの世代の一番若い年齢です。そうです。この年齢が39歳ですよ!!35歳から妊娠率は落...

私は、現在二人目妊娠中の39歳です。いわゆる第二次ベビーブームの世代の一番若い年齢です。
そうです。この年齢が39歳ですよ!!

35歳から妊娠率は落ちるとか世間一般的にやっと言われ始めましたよね。そういう知識をもってみると、39歳でよく授かったようなものだというような年齢ではないですか?
周りを見渡しても結婚すらしていない同級生も多いです。今更子供を持つというのは、かなり難しいんだろうと想像します。

せめて、政府も出生率の目標値定めるのなら、なぜ、10年前にやらなかったのだろうと思います。

私は、10年前に、とある本を読んで、30代過ぎると、妊娠率が落ちるという事実をしり、それから今でいう妊活をはじめ、数年後やっとこさ、第一子に恵まれました。
周りを見渡しても、あまりそういう人はいなかったと思います。今ほどそのことは騒がれていませんでしたし。

最近テレビでも妊娠率と年齢の関連をやっとこさ言われ始め、不妊というのが一般的な知識としてついてきて、女性手帳なるものも登場し、政治的なプロパガンダもあるんだろうなあと思ってますが、それにしても、これは、どの世代をターゲットにしてるのか、不明です。

第二次ベビーブーム世代以降??これからどんどん対象者は減っていきますよ?

なぜ、一番出生率が得られやすかったであろう、第二次ベビーブーム世代のことをもっと考えなかったのだろう?ここを真剣にターゲットにして、施策を打っていれば
楽に出生率も上げられただろうに。。

これが、一般企業の商売であれば、マーケティングに大失敗してますよね。会社がつぶれるかもしれません。
もちろん、私たちからむしり取った血税から実施した政治だから許されるというものではないですし、10年前に少子化対策やってた政治家はなぜ、責任とらないの?とも思ったりしてます。

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少子化対策は存在しません。

マウンテン

「人口減少が国民全体の問題だと認識」していなかったのは、長期の自民政権だと思いますけどね。そもそも「少子化対策」という施策は、存在しないと思いま...

「人口減少が国民全体の問題だと認識」していなかったのは、長期の自民政権だと思いますけどね。そもそも「少子化対策」という施策は、存在しないと思います。
少子社会であろうと多子社会であろうと、調和のとれた子供に成長させる環境を作ることは、子どもは国と宝と認識するなら、何十年も前から重要課題だったはず。それをないがしろろにしてきて「少子化対策」となづけて、なんだか一所懸命とりくんでるふりをされても信用できません。

数値目標はあってもいい。だがそれは多産を促す政策を考える人達のもので、国民に押しつけるようなことがあってはならないと思います。
個人的には、短期的には大量移民の受け入れ、長期的には北欧並みに医療費、教育比を無料化することで多産が望めるのではないかと推測します。

でも、ベビーカーを折り畳むか畳まないかで、悶着するような社会です。子どもも育ちにくいし、日本女性の価値観がわかりその気にならない限り、子どもはふえないと思っています。
目標数値への道のりは険しいでしょう。

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出生率と教育と軍事力とお金 消費増税

元放射線科医 寺田次郎 六甲学院56期

昔みたいに「産めよ増やせよ」ってわけでもないでしょうが、昨今の世界情勢の中で日本の老人が何を考えているのかは気になります。「私たちはお金を持って...

昔みたいに「産めよ増やせよ」ってわけでもないでしょうが、昨今の世界情勢の中で日本の老人が何を考えているのかは気になります。
「私たちはお金を持っているから大丈夫」
という発想は半分正解ですが、半分外れですね。

通過を担保するのはその国の技術や金融資産以外に軍事力の側面があることはリアルです。
だから、「有事の金」、「有事のドル買い」という言葉は今なお一定の意味を持ちます。
日本が侵略されれば、持っている通貨が意味をなさなくなる可能性はありますし、資産は没収の対象になりえます。
戦後の財閥解体などは有名ですね。

この平和ボケ日本では軍事力というと、良くも悪くも極端な捉え方になります。
だから、世論は大きく揺れるわけですね。
軍事力と言っても、色んな捉え方があります。
直接武力行使だけでなく、外交は勿論、医療や製造業、サービス業およびその人材は軍事力とも言えます。
人やモノを作り、立て直す国力ですから。
特に直接武力の無人化や高度化が進んでいる以上、むしろそっちの能力差の方が重要になるかもしれません。

子供が生まれて、成長して、各種の職業を担うことになるわけで、実際問題好き嫌い以上にドライな目線で見てより多くの優秀な若者を製造しないと、いくらカネがあっても、意味がなくなる可能性もあり得ますね。
とはいえ、消費増税などで、庶民の教育機会は不利になり、医療も一部揺れ動いている中でどうなるのでしょうね?

極論、一部の若者は移民なんかも視野に入るわけです。
アタマや手に染み付いた技術はなくならないですからね。

「それでも、日本国民か?」
と言われるかもしれませんが、世界では内戦がおこって、人が死んで、結果的に移民が発生しているわけです。
偶然かも知れませんが、子供を米国で産んだりする知人も出ています。

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