文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

浦上克哉・鳥取大医学部教授講演「認知症予防の最新情報」

イベント・フォーラム

講演(1)注意すべき物忘れとは?…認知症、早期発見の方法

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 読売新聞の医療サイト「ヨミドクター」とデジタルサービス「読売プレミアム」、会員組織「わいず倶楽部」は18日、大阪市北区の読売大阪ビルで、会員限定の医療セミナー「認知症予防の最新情報~正しい理解と効果的な予防法~」を開きました。

 セミナーでは浦上克哉・鳥取大医学部教授が講演しました。内容を詳しく紹介します。

浦上克哉(うらかみ・かつや)さん

 鳥取大学医学部教授、認知症予防学。1956年生まれ。鳥取大学医学部卒。同大学医学部脳神経内科などを経て、同大学大学院医学系研究科保健学専攻・病態解析学分野教授。アルツハイマー型認知症および関連疾患を専門とし、診断マーカーの開発研究、外来での診察と治療、ケアなど総合的に認知症と取り組んでいる。著書に「認知症 よい対応・わるい対応―正しい理解と効果的な予防」(日本評論社)、「認知症は怖くない18のワケ」(JAF MATE社)など多数。



認知症患者「2年間で倍増」の理由

 きょうは認知症予防の最新情報ということで、お話をしたいと思います。

 認知症の患者はどんどんと増えています。2012年時点で推計462万人の認知症患者がいるということが、昨年発表された厚生労働省の調査でわかりました。厚生労働省は、2010年時点では認知症患者の数を約200万人と発表していたので、2010年から2012年までの2年間で一気に倍増したことになります。では、この2年間で急激に認知症患者が増えたのかというと、そんなことはありえません。これは、2010年の調査では、軽い認知症の患者が見逃されていたことが理由ではないかと思います。

 つまり、この数字は、認知症の早期発見が求められていることを表していると言えます。

 認知症予防について皆さんにお話しする前に、認知症がどんな病気であるかということを、正しく理解していただきたいのです。

 皆さんが認知症を予防したいと思われる最大の理由は、認知症は怖い病気だと思っておられるからだと思いますが、私に言わせれば、認知症は本来、物忘れのために日常生活や社会生活ができなくなっていく状態で、穏やかに緩やかに経過していく病気だということです。ですから、早い段階で、きちんとした治療や対応をしていけば、そんなに怖い状態になるわけではないのです。

 ところが、早期の治療や適切な対応ができていなかったために、不必要な悪化を招いているという現実もあるということを知っていただきたいと思います。

 早期発見が大事なのですが、早期発見を難しくしている要因が数多くあります。その最も大きな理由が、認知症のことを単なる老化現象だとか、加齢のせいだと思っておられる方が多いということです。老化現象だと思ってしまうと、病院で診てもらおうという気持ちにもならないわけですから、早期発見の大きな阻害因子となっているわけです。

 例えば、夜間に徘徊はいかいをして家族を困らせるなどの状態になって初めて、病院に行って「何とかなりませんか」と相談される方が多いのが現状です。


「内容を全部忘れる」なら要注意

 それなら、早期発見をするにはどうしたらいいのか。徘徊のような、困った症状が出てからではなく、そういった症状が出る前の、物忘れだけの段階から、早く相談していただくということです。

 でも、それで「物忘れがあったら病院に行ってください」ということだけなら極めて簡単で、ここで話が終わってしまうことになってしまうのですが、そうはいかないのです。

 なぜかというと、物忘れには2種類があるからです。

 単なる物忘れと、病気による物忘れです。

 単なる物忘れというのは、正常な人が年を取っていくに従って増えていく物忘れなのです。それに対して、病気による物忘れは、認知症の物忘れなのです。この二つは、区別がつきにくいところはあるのですが、同じものではないのです。

 この違いがわかりにくいので、認知症の早期発見が遅れることになるのです。

 単なる物忘れというのはどのようなものかと言いますと、「内容の一部を忘れる」という忘れ方なのです。

 一方、病気による物忘れは、「内容を全部忘れる」という忘れ方です。

 例えば、認知症のおばあちゃんが隣の家に行って「ウチの嫁が鬼みたいな嫁で、朝飯も食わせてくれないんだ」と言うと、隣の家のお嫁さんが「おばあちゃん、そんなひどい目に遭っているの?」と同情して朝ごはんを食べさせてくれました。実際には、お嫁さんは鬼ではなく、ちゃんと朝ごはんも食べさせてもらっているのに、食べたこと自体も忘れてしまっているので、おばあちゃんは朝ごはんを2回も食べることになったというケースです。


「顔はわかるが名前が…」「ヒントあれば思い出す」…単なる物忘れ

 正常な人なら、このような物忘れはしません。

 例えば、私が今、「お昼ご飯のおかずを言ってみてください」と質問して、おかずのうちの1品ぐらいを忘れているのなら、正常な方の「内容の一部を忘れる」という物忘れです。

 また、テレビに出てくる俳優の顔は覚えているけれども名前が出てこないことを心配する必要はありません。

 この他、紙を切るためにハサミを探して隣の部屋に取りに来たけれども、他のことを考えながら来たので、何を取りに来たのかが思い出せない。元の部屋に戻って紙が見えた途端、ハサミを取りに隣の部屋に行ったことを思い出すなど、ヒントがあれば思い出すような物忘れも、心配する必要はありません。


「メモしてもメモをなくす」「道具の使い方を忘れる」…認知症の物忘れ

 この他に、どんな物忘れだったら心配するべきなのでしょうか?

 例えば、昼間に留守番をしていて、息子さんに重要な伝言を頼まれました。帰ってきたら、伝えないといけないと思って、一生懸命メモをとるのですが、息子さんが帰って来て、「伝言なかったか」と聞かれて、メモを取ったのを思い出したけれど、そのメモをどこにやったかを忘れてしまう……。こういうことになってしまいますと、心配な物忘れということになってしまいます。

 さらに、今まで使っていた道具の使い方を忘れていたり、電気製品のスイッチの入れ方や、使う手順を忘れてしまっていたりする場合も心配です。

 このような物忘れが出たら、早めに相談してください。

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

イベント・フォーラムの一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、ヨミウリ・オンライン(YOL)、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

浦上克哉・鳥取大医学部教授講演「認知症予防の最新情報」

最新記事