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深化する医療

子ども不整脈に心筋焼灼術

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 大阪市立総合医療センター(大阪市都島区)には、全国で唯一の「小児不整脈科」がある。生まれつきの重い不整脈に薬が効かなくなった子どもたち、学校の検診で不整脈が見つかり激しい運動を制限されていた生徒らが、「カテーテル・アブレーション(心筋焼灼しょうしゃく術)」と呼ばれる手術を受け、完治している。

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心臓の立体画像をモニター(手前)で監視しながら、手術室(奥)で治療が進む(大阪市都島区の市立総合医療センターで)=森田昌孝撮影

 心筋焼灼術の対象は、心臓の拍動(心拍)が1分間に150~200回に達する「頻脈」と呼ばれるタイプの不整脈だ。胎児が育つ過程で異常な組織が心臓の筋肉(心筋)の中にできるのが原因だ。赤ちゃんの時に診断されることもあるが、小、中学校の検診で見つかり、運動を制限されることもある。

 薬で抑えることもできるが完治はしない。心筋焼灼術では異常な組織を焼き、原因を根元から断ってしまう。

 同科部長の鈴木嗣敏(47)が言う。「9割の確率で不整脈が消え、手術直後に普通に運動できるようにもなる。子どもたちの成長に果たす役割は大きい」

 同科は2009年4月、小児の心筋焼灼術専門の診療科として発足した。全国から患者が訪れ、鈴木らは発足後4年で550件を手がけた。

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 手術は全身麻酔で行い3~4時間で済むが、6日間の入院が必要だ。体重15キロ以上、4歳以上なら合併症を起こすことはほとんどない。

 脚の付け根の血管から、センサーがついたカテーテル(細い管)を心臓まで進め、異常な電気信号を発する組織を探す。見つかれば、同じ血管から先端に電極がついた別のカテーテルを心臓に入れ、高周波電流を流して50度前後の熱で焼く。電極が組織の真上に接して、直径5ミリ、深さ3ミリの範囲が焼ければ成功だ。ただ、少しでもずれると、焼いた組織が元に戻ってしまい、不整脈が再発する。

 電極の先を体外から磁気で探知し、ミリ単位で位置を特定する装置が開発された。コンピューター断層撮影法(CT)のデータから立体画像化された心臓の中を電極が進む様子が手に取るようにわかり、成功率は飛躍的に上がった。

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心臓の中を進むカテーテルの位置が、立体画像の中でミリ単位で確認できる

 外科手術の進歩で重い心臓病を持って生まれる赤ちゃんの救命率が上がったが、20~30歳で不整脈を発症する確率が高まる傾向があるという。

 この場合にも心筋焼灼術は有効だ。先天的な心臓病に詳しい鈴木らが治療を担当するが、幼少時の手術で心臓内部の形が複雑になっており、正確に組織を探るのが難しい。そこでも磁気探知装置が威力を発揮する。

 乳幼児の心臓外科手術が本格的に始まって30年あまり。鈴木が力を込めた。「外科手術を経験した人たちの不整脈の訴えは今後、確実に増える。私たちはその時に備え、技術を磨いている」(敬称略、増田弘治)

 
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