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「日本版NIH」の役割は?

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医薬品、機器の実用化加速

 医療分野の研究開発の司令塔として、米国立衛生研究所(NIH)を参考にした、「日本版NIH」が来年度に発足する予定です。設立の根拠となる2法案が今月10日に衆院本会議を通過し、今国会で成立する見通しです。医薬品や医療機器の実用化が加速するという期待が高まる一方で、事務担当の内閣官房が「米NIHとは別物」と日本版NIHの呼び名を封印する動きも起きています。

 ――日本版NIHはどんな組織になる予定ですか。

 「医療のどの分野に重点を置くかの方針を決める『健康・医療戦略推進本部』と、その方針に沿って大学などに研究費を配分する独立行政法人『日本医療研究開発機構』からなります。同本部は全閣僚がメンバーで、本部長は首相です。同機構は医薬基盤研究所などから職員を移して新設し、製薬企業の研究者や大学教授を募り、300人体制となる方向です」

 ――なぜ新組織が必要なのですか。

 「日本製薬工業協会によると、2008~11年に基礎研究の主な3論文誌に掲載された日本人の論文数は世界4位だったのに対し、臨床研究の3論文誌では25位でした。基礎研究の成果が実用化につながっていない実態が明らかになりました」

 「原因の一つに、基礎研究、臨床研究、実用化をそれぞれ担う文部科学省、厚生労働省、経済産業省の『縦割り』が指摘され、基礎から応用まで切れ目のない支援を強く求める声が産業界などから出ました。製薬業界では、新薬開発が難しくなり基礎研究を生かしたいという要望も高まっています」

 ――切れ目のない支援はどう実現するのですか。

 「同本部が3省と話し合って重点分野と各分野の予算額を決め、3省の予算が同機構に集まる仕組みを作りました。重点分野はがんや再生医療など9分野が選ばれ、準備段階となる今年度は1400億円(前年度比400億円増)を確保しました。同機構では研究管理に秀でた『プログラムディレクター』が中心となり、各分野の予算の配分先となる研究機関を選んだり、研究の進み具合をチェックしたりする予定です」

 「研究データの改ざんや捏造ねつぞうなどの研究不正が近年多発しているため、同機構に防止や発生時の調査を担う専門部署も置きます」

 ――なぜ日本版NIHの呼び名を使わなくなったのですか。

 「組織の体制が米NIHと異なるものとなりそうだからです。米NIHは、がん研究所や心臓肺血液研究所など27機関の集合体で、外部機関への研究助成だけでなく、独自で研究を活発に行っています。27機関には臨床センターという臨床応用を担う機関もあり、近接した立地で他の研究機関と成果を互いに生かし合っています」

 「安倍首相は昨年4月、医学医療の研究開発を着実に進める米NIHに着目し、日本版NIH構想を掲げました。ただ、米NIHは予算額が300億ドル(3兆円)、研究職を含めた職員数は1万8000人と巨大で、日本版を拡充させても及びません。与党からは『(NIHと)大風呂敷を広げて色々言わないように』との声も上がり、内閣官房は『米国と同じような組織を作るという誤解を与える』と同機構の名称が内定した年末から、NIHの呼び名を使わなくなりました。同機構の通称は『AMED』にする方向です」

 ――米NIHを見習う点はありますか。

 「米NIHでは、予算の半分以上を基礎研究に配分しています。基礎研究の成果がなくなれば、実用化するものも将来尽きてしまうという考え方からです。実用化に力点を置く日本版NIHですが、基礎研究も政府全体でしっかりと支援しなくてはいけません」(米山粛彦)

 NIH=National Institutes of Health

 AMED=Japan Agency for Medical research and Development

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