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四十路の女の生き方伝授・湯山玲子さん(3)「ブスだけどカッコいい」

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 ――具体論に入りますが、四十路を越えたら、おしゃれも人並みから脱せよ、とありますね。

 「おしゃれは自分をわかってもらうための手段でありマナーであり、人にバカにされないための自己防衛でもあるんですよ。例えばパーティーへ着飾っていくというのは、自分が華やかですてきな姿をその場に提供することでムードをつくり、皆さんにも喜びをお裾分けするという心意気でしょう? そういう人には、皆、好感を持つもので、そういったことがおしゃれの本質なのです。その反対に、外見に構わないという人たちからは、自分は外見じゃなくて中身だから、そのままの自分を愛してくれ、という一種傲慢なメッセージを受け取ってしまいます。お前何様だということですよね。ファッションは自己主張の反面、外に自分を出していくためのサービス的なコミュニケーションでもあるのです」

 「若い頃は、流行に乗っていればきれい、ということがあったんですが、四十路を越えたら、それではイタい。紋切り型の言い方ですけれど、大事なのは『個性』ですよね。ブスだけどカッコいいという方向性です。まあ、中年以降に、すてきだなと思う人に美人はあまりいない。ブスを個性にうまく転化すると、非常に魅力的な雰囲気がつくれる。逆に、美人が工夫もなくそのまま年を取ると、若いときにはきれいだったけれど、という残念な印象を与えてしまう」


 ――今まで流行に乗っていた人にとって、自分に合ったものを探すというのは難しいかもしれません。自分を生かしたおしゃれの仕方をアドバイスしてくださいますか。

 「具体的に言うと、女性の印象って髪形と化粧で決まる。服は二の次、ファストファッションでいいんです。髪形に関しては超重要で、周りを見た時にすてきな髪形の人がいたら、その人の担当美容師がいる美容室に行った方がいい。そして、その人に全部お任せにしてみる。それが一番、費用対効果が高いですね。いい美容師は、その人の中から瞬間的に、彫刻家のように内面を引き出してくれるんですよ。次に行くのは、デパートの化粧品売り場。そこに1万円ぐらい握りしめて行って、ただでメイクしてもらう。私メイク悩んでいるんですよ、と言ったらやってくれますよ。そこで気に入ったものを買ってみる」

 「自分らしく、というファッションの金言はなかなか難しい。自分が本当に好きだったら似合わない服でもその人らしくなるんだけど、それすらもわからないようだったら、あきらめて、他人に見つけてもらうことです。これはネットで個人的なスタイリングを頼んでもいいし、もっと簡単なのは、ブティックに行って、熱心な店員がいたら、その人に見立ててもらうのも手。着こなしが自分好みの店員さんならば、見立ての方向も間違わないんじゃないかな」


 ――何も見た目に構わず好いてもらおう、というのは怠け者だ、とおっしゃっています。

 「知り合いの日本人夫婦の夫の方が海外のレストランで人種差別受けたって怒っていた。その激怒ぶりに、この人は駐在が長かったというわりには、何もわかっていないんだな、と。何を言いたいかといえば、人種差別は確実にあるものだという現実。その前提の下でグローバリゼーション、国際化というものはある。でも、そういう意識の上で、外見やエレガントな態度でそういう相手の下心を抑えることは可能です。一般的に三つ星のレストランを予約して良い席に通される、というのは、残念ながら会社の名刺の力ではない。意識的にきれいにして、私はこうなんです、こういう者なんですということをわかってもらうために着飾る。TPOに関しては、外国人は相当きっちりやっていますね。デートといえば、いったん家に帰ってハイヒールを履き直したり、セクシーな服に着替えたり。ロサンゼルスには『カールパーラー』という場所があるんですよ。ドライヤーが置いてあって、自分で髪をセットできるスペースがあるの。要するに、仕事帰りにヘアを自分で巻き髪にするための、ドレスアップスペースなんですよね」


 ――見た目で、自分の内面や立ち位置をわかってもらう努力を日本人はサボっていると。

 「そうです。そういった意識は、昔のように会社だけ、地域だけというような閉じた空間だけならば必要ないけれど、出会いやチャンスを外に求めていった場合には、絶対に必要になる。会話でのコミュニケーション力に自信がない、というタイプならばなおさらです。日本人は勤勉だ勤勉だと言われているけれど、それは人に後ろ指さされないためとか怒られないためだけにやっているのであって、自分で快適な人間関係や環境をつくるための努力に関しては、かなり怠け者です」(続く)

湯山玲子(ゆやま・れいこ)さん

 1960年、東京都出身。作家、ディレクター。日大芸術学部非常勤講師。「四十路越え!」「四十路越え! 戦術篇」(角川文庫)、「女装する女」(新潮新書)、「文化系女子という生き方~『ポスト恋愛時代宣言』!」(大和書房)など著書多数。


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