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茂木健一郎のILOVE脳

yomiDr.記事アーカイブ

データに基づく「科学的ダイエット法」

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 「脳科学を応用して、やせる!」

 と、前回のコラムで宣言したら、周囲の反響がすごかった。

 「おいおい、本気か?」

 「どうせ、無理だよ」

 「いつまで続くかな」

 「やっとその気になったか」

 「消費税も上がることだし、いいんじゃないか」

 みな、他人のことだと思って、気楽にいろいろなことを言っている。


自分のお腹に聞いてみる

 さて、私は科学者である。だから、どうせやせるにしても、科学的なアプローチでやせたい。

 私のやり方は、脳科学を応用した、「メタ認知」。ダイエット食品を使うとか、運動するとか、そのようなことも大切かもしれないが、自分自身の「空腹度」に向き合う、「メタ認知」を応用したい。

 つまり、自分自身と対話することで、やせてみようと思うのである。


「腹ぺこ」が当たり前だった子ども時代

 それで思い出すのが、小学校の頃のこと。朝食を午前7時過ぎに食べて、学校に行き、だいたい午前10時くらいには、すでに、最大限の空腹度に達していたように思う。授業を受けながら、おなかがぐうぐう鳴って困っていたものだ。

 給食の時間になって、好物の揚げパン(揚げたパンに、きな粉をまぶして食べる)や、ソフト麺、カレーライスが出るのが楽しみで、2時間目が終わる頃から、そわそわしていたのを覚えている。

 空腹を覚えて、お腹が鳴ってから、給食が開始されるまで、約2時間。すなわち、それだけの時間、最大限の空腹に耐えていたことになる。

 それが、健康の方程式というものだろう。

 最近はどうか。どうも、朝ご飯を食べて、お昼になるまでに、最大限の空腹など、経験していないような気がする。というよりも、さほどお腹が空かないままに、昼食を迎えることが多いような気がする。


お腹が空くまで何時間?

 これでは、どうにも、痩せようがないのではないか。やはり、体重を減らすためには、空腹の時間を持つ必要があるのではないか。

 そこで、考えた。朝ご飯をきちんととった場合、それからの時間経過の中で、空腹度はどのように変化するのか、データをとってみよう。

 朝食は、いつものようにちゃんと食べる。それから1時間後、2時間後、3時間後……に、昼食の時間になるまで、自分がどれくらいの空腹度を感じているか、5段階評価で計測することにした。

写真1

 ここに、5段階とは、「0」=満腹、「1」=ほぼ満腹、「2」=そろそろお腹が空き始めた、「3」=お腹が空いた、「4」=最大限に、お腹が空いた。である。朝食をとってから、1時間後、2時間後、3時間後……に、自分がどれくらい空腹を感じているか、1週間にわたって記録した。そして、その平均を示したグラフが、写真1である。


 (科学者というのは、くだらないことをやるものだ、と思う人がいるかもしれない。その通りである。食事をした後、「あっ、1時間った、今の空腹度はどれくらいかな、2かな、じゃあ、記録しておこう」というようなことをやっているところを想像すると、なんだかアホらしい。しかし、そのアホらしいデータを積み重ねていくと、案外何かが見えてくるかもしれないのである!)


 さて、グラフを見ると、朝ご飯を食べてから、「最大限に、お腹が空いた」という状態になるまでには、だいたい6時間くらいを要していることがわかる。

 すなわち、たとえば朝8時にご飯を食べたとすると、午後2時くらいになって、ようやく「最大限に、お腹が空いた」という状態になっているのである。

 これでは、体重が減るはずがないと思う。小学校の頃は、「最大限にお腹が空いた」状態になってから、2時間は、お昼までの間があったのである。仕事上、会食も多い。だいたい12時ぴったりに始まるから、せいぜい、朝ご飯から経過したのは4時間。グラフから言えば、空腹度はせいぜい2の状態(「そろそろお腹が空き始めた」)で、お昼を食べていることになる。


 ううむ。

 私は、グラフを眺めながら、考えた。小学校の頃に比べたら、当然、基礎代謝も、食べる量に比べて少ない。この状態で、朝ご飯をきっちり食べて、お昼も食べていたら、お腹が空く余地がない。

 健康のためにも、本当は、午前中にきっちりと「空腹の時間帯」を作りたい。しかし、そのためには、朝ご飯を普通に食べてしまっては、どうも難しいようだ。

 私は、このデータをもとに、科学的なダイエット法を、いろいろ考え始めたのである。(次回に続く)

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茂木 健一郎(もぎ けんいちろう)
脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。1962年、東京生まれ。東大大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。クオリア(感覚の持つ質感)をキーワードに脳と心を研究。最先端の科学知識をテレビや講演活動でわかりやすく解説している。主な著書に「脳の中の人生」(中公新書ラクレ)、「脳とクオリア」(日経サイエンス社)、「脳内現象」(NHK出版)、「ひらめき脳」(新潮社)など。

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