文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

いい湯で健康 温泉と自然療法

yomiDr.記事アーカイブ

入浴の適温は?放射能泉は安全?…質問に答えます

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 皆さま、こんにちは。札幌もようやく春めいてきて、最高気温が10度を超えるようになってきました。こうなると1メートル以上もあった庭の雪、道路の脇に積み上げられた雪の山が、目に見えて低くなっていきます。そろそろ、車で温泉に出かけたい気分になってきます。

 さて、3回目4回目と「温泉とはなんぞや?」という話になってしまい、これはこれで、これからの連載に必要な知識なのですが、少々つまらない内容になったのではと申し訳なく思っています。そこで今回は趣向を変えて、皆さまから寄せられた質問や疑問にお答えすることにしました。ブログに寄せていただく反応が少しでも多いと、私もやる気が増してきますので。

まず、最初の質問:
「長年の乾燥肌。皮膚のかゆみに効く入浴、漢方薬は?」

 入浴は皮脂を洗い流してしまいますので、皮膚を乾燥させてしまいます。しかし、入浴中に皮膚は水分を吸収していますので、風呂上がりに体を拭いた後に保湿剤を塗ることにより、皮膚の中に水分がとどまっている時間を長くすることが可能です。ナトリウム炭酸水素塩泉のようなアルカリ性の温泉には、皮脂を乳化して洗い流す作用があるので、美人の湯だからといって何回も入りすぎると、肌がガサガサになる危険性があるのです。

 夜中に体がかゆくなるのは、布団に入って体が温まり、毛細血管が拡張して血流が増えることがかゆみとして感じられるからです。

 さて漢方薬ですが、地黄(じおう)を含む漢方薬は肌に潤いをもたせる働きがあります。診察してみないと正確なことは言えませんが、皮膚乾燥症、皮膚瘙痒(そうよう)症の方には当帰飲子(とうきいんし)、六味丸(ろくみがん)、滋陰降火湯(じいんこうかとう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)などを使用しています。

2番目:「シャワーの効用は?」

 今でこそ毎日シャワーを浴びる生活ですが、ニューヨークに留学するまでは週2回程度の入浴でした。学生時代ですね。道産子ですので、気温の関係でそれほど頻回に入浴する必要もないのです。世界では入浴そのものをしない民族もあるようで、土地の気候が重要なのでしょう。さて、アメリカ生活で毎日シャワーを浴びるようになり、こんないいものはないと、今ではどんなに遅く帰ってきてもシャワーを浴びてから寝るようになりました。

 シャワーは水圧によるマッサージ効果を期待できますし、実はマイナスイオンがたっぷり発生するのです。水がはじけるときにマイナスイオンが発生するのはレナード効果といい、噴水、滝の周辺ではマイナスイオンが大量に発生しています。夏場に噴水や滝のそばに行くと気持ちがいいのは、冷やっとするばかりではなく、マイナスイオン効果もあると思っています。シャワーを出す前のマイナスイオン濃度は空気1cc当たり数百程度ですが、蛇口をひねった途端に2万個を超えており、びっくりしました。空気イオンについてはまた別の機会に詳しく話したいと思います。

3番目:「泉質による入浴法の違いは?」

 療養泉の説明がまだでしたので、ここで少し触れることにします。一般に温泉入浴後は上がり湯に水道水は使わない方がよい、とされています。これは、温泉成分の皮膚からの吸収は浴後3時間程度続くからだそうです。しかしながら、草津温泉のような酸度の強い温泉に入浴すると皮膚炎を発症することがありますので、泉質によっては浴後に水道水で洗い流すように注意書きがされています。

 さて硫黄泉ですが、一口に硫黄泉と言ってもアルカリ性の硫黄泉、中性の硫黄泉、酸性の硫黄泉、単純硫黄泉、含硫黄○○泉など多種多様です。草津や北海道の川湯温泉などの火山性の温泉では、高温・高圧の地下環境で岩石が溶けるため、鉱物質がたくさん温泉水に溶け込んでいます。このような温泉は、正確には含硫黄○○泉と命名され、石鹸せっけんが泡立ちにくいのです。

 入浴は体を温めますが、特に大きな浴槽に入ることにより、リラックス効果が出現し、湯冷めしづらくなることが、我々の研究で明らかになっています。この意味では、温泉は泉質を問わないわけですが、水温によっては交感神経優位になり、リラックス効果が薄らぐことが考えられます。

4番目:「入浴温度は何度がいいのか?」

 この質問・疑問が一番多いようですね。私たちの入浴温度に関する実験をまとめてみますと、(1)体温は40度で約1度、42度で約2度上昇、(2)脈拍数は40度で1分間に約20、42度で約30拍増加、(3)収縮期血圧は40度で約10、42度で約20mmHg上昇、(4)血液粘度(ドロドロ度)は42度で増加する(群馬大学草津分院・白倉先生)ことがわかりました。風邪をひいた時と同じくらい発熱するのです。結構な負担だと思いませんか?

 酸化ストレスについて言えば、42度、10分間の入浴で増加。39度で変化はありませんでした。また、糖尿病の合併症形成に関係しているポリオール代謝が42度でのみ亢進こうしんしました。このようなことから、私たちは42度での入浴は避けた方が良い、と提唱しているのです。

 20~30歳代の元気な若者で、特に病気を持っていない場合は、これらの変化を気にして水温に気を遣う必要はないと思います。それは年齢が若いことから血管の動脈硬化が進んでおらず、血管に柔軟性があり、心臓機能も衰えていないからです。さらに、酸化ストレスに対する防御能はもともと生体に備わっていますので、すぐに活性酸素等を除去してくれるのですが、この機能も年齢とともに衰えてくるからです。

 最近、ヒートショックプロテインと健康との関連が言われていますが、この生成には42度での入浴が必要とされます。でも動脈硬化が進んできた年代や糖尿病、高血圧、心臓病などを持っている人は、42度での入浴は避けた方が無難かなと思っています。

 42度のような高温浴では、確かに肌に触れる水温が高いので皮膚表面の温度は上がります。ただし、交感神経が優位になるため、血管が収縮しているので、血管内を流れる温まった血液量が減少するので、身体は芯から温まらないのです。40度と42度とでどちらが湯冷めしないか行った実験があります。予想通り40度の方が芯から温まるため湯冷めしづらいことが、サーモグラフィーを使用した実験で明らかにされています。

 では入浴温度はどのくらいが適温なのでしょうか。40度(高くても41度まで)のお湯にゆっくりかってください。そのぬるさ加減に慣れると、もう42度のような高温浴はできなくなります。湯船から出るタイミングは、(1)ひたいに汗が出てきたら、(2)心臓がドキドキし始めたら、それ以上は無理をしてはいけません。

5番目:「ラジウム温泉は安全なの?」

 原発事故後から、放射能泉に関して不安を抱く方がたくさんいらっしゃいます。アメリカでは気密性の高い住宅で、地盤から発生したラドンガスによる発がん性の問題が提起されています。ラドンガスはラジウムから発生しますので、日本では放射能泉のことをラジウム温泉とも称します。さて、日本の放射能泉の発がん性はどうなのでしょうか?

 放射能泉で有名な鳥取県の三朝温泉、山梨県の増冨温泉で、住民のがんの発生率が高い、という話は聞いたことがありません。むしろ両温泉ともに、昔から湯治の場として栄えています。放射能については、「ホルミシス効果」といって、放射線は微量であれば決して毒ではなく、それどころか、かえって生命の活力を刺激し、健康に役立つという考え方があります。この現象は、微量の放射線だと、ホルモンのように作用するという意味でホルミシスと言われています。一方で、放射能は微量でも有害で、容量依存的にその害が増す、としている学者もいますが、私は日本の放射能泉のレベルでは発がん性は考えられないと思っています。

 オーストリアのバードガスタインでは洞窟療法というのが行われています。その洞窟内にはラドンガスが豊富に存在しています。以前は鉱山で、作業終了後に出てくる労働者の疲労が少なく、なんだか元気になっているのを不思議に感じて調べてみたそうです。現在ではリウマチなどによる関節の痛みに効果があるということがわかり、文字通り洞窟療法が行われています。

 さて、いかがでしたでしょうか。皆さまの疑問が解決しましたか? それとも新たな疑問が生じたでしょうか。次回も療養泉についての解説を続けたいと思っていますので、よろしくお願いします。

最後におまけですが、わが家の住人を紹介します。あるお笑い芸人さんが飼い猫と一緒にお風呂に入っている写真を公開していました。私もぜひ温泉に混浴している写真を撮りたいと思っています(雌猫です。笑)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

いい湯で健康 温泉と自然療法_大塚吉則_顔120px

大塚吉則(おおつか よしのり)

北海道大大学院教育学研究院教授

 

1955年、北海道生まれ。79年、北海道大医学部卒、第1内科に入局。89年から米ニューヨーク市のコーネル医科大に留学。北海道大病院登別分院・医学部附属温泉治療研究施設(温研)勤務などを経て2007年から現職。国際温泉気候医学会(ISMH)アジア・オセアニア地区代表、日本温泉気候物理医学会理事長、日本生気象学会幹事、NPO健康保養ネットワーク理事長。主な著書に「新版温泉療法 温泉と自然が生み出す健康づくり」(Crews)、「そもそも、すべてが『体質』のせいなのか? 自然治癒力を引き出し幸せになる方法」(Medical Tribune)など。

いい湯で健康 温泉と自然療法の一覧を見る

8件 のコメント

温泉のシャワーが欲しい

埼玉のシニア

そうなんです。シャワーの良さは肌に触れるお湯と、それで出来る水泡がたまりません。うなじに掛けると、フワーと出る声もたまりません。汚れが体から離れ...

そうなんです。シャワーの良さは肌に触れるお湯と、それで出来る水泡がたまりません。うなじに掛けると、フワーと出る声もたまりません。汚れが体から離れてゆきます。

めざめたじいさんも、ことしは秋までシャワーを使いましょう。強めの水圧で頭の先から足の先まで、シャワーですっきりしましょう。

今日は昼食後シャワーを使いカラオケに行ってきましたが、このようなこともシャワーだから出来ることですね。欲を言えば温泉のシャワーが有ればね。

つづきを読む

違反報告

シャワーヘッド交換で、天に昇る

めざめたじいさん

 シャワーの水圧でマッサージ効果があり、毎日使うと埼玉のシニアさまのように元気になれる。 最近見つけたシャワーヘッド、優れものでごくごく小さな泡...

 シャワーの水圧でマッサージ効果があり、毎日使うと埼玉のシニアさまのように元気になれる。

 最近見つけたシャワーヘッド、優れものでごくごく小さな泡が、身体にいい刺激を与えてくれます。また、身体を擦らずに汚れが落ちる、と。

 身体にいいものは何でも試してみるのが私の流儀、弱い肌にも効果があるようです。

 マイクロバブルシャワーヘッド、ちょっと値段が気になりますが、使うほどに効果が出てくようです。

 シャワー室から離れられなくなるかも。身体の弱い家内も喜んでいます。

つづきを読む

違反報告

シャワーは強いほうがよい

埼玉のシニア

いいな、、、温泉、大きな風呂につかると緊張がほぐれ、ぐた~となって、こんなことが365日続くといいいな と思ってしまう。仲間内の旅行はそれからが...

いいな、、、温泉、大きな風呂につかると緊張がほぐれ、ぐた~となって、こんなことが365日続くといいいな と思ってしまう。仲間内の旅行はそれからが本番で、飲んで騒いで、まるで少年のようになる。次の朝は疲れが残るが、それも良い。

めざめたじいさんは皮膚が弱いそうで、わたしの家内と同じ。風呂も長くは入らない。入っても直ぐ出てきたものだ。ホームの介護者にも言ってあるのに、時に長湯のためグッタリしている。文句は言わない。面倒を見て貰っているのだから。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

最新記事