文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

イグ・ノーベル・ドクター新見正則の日常

yomiDr.記事アーカイブ

マスクとうがい・手洗いの疑問

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 インフルエンザや風邪の予防に手洗いやうがい、そしてマスクなどを勧めるポスターを見かけます。


ドイツ人は日本のマスクに大笑い

 先日、ドイツの友達がはじめて日本に来て、一緒に食事をしたときに、「Masanori、地下鉄の中にマスクをしたひとがたくさんいるけど、なんでだ?」と質問されました。僕はインフルエンザの予防のためだと思うと答えると、おなかを抱えて笑っていました。彼にとってはナンセンスに映るのですね。

 だって、インフルエンザはウイルス疾患で、そのウイルスは本当に小さいのです。A型インフルエンザの大きさは約100ナノメートル、つまり1ミリメートルの1万分の1です。そんな小さなウイルスはいくらマスクをしても呼吸すれば、マスクの網の目を通り越して肺に入りますね。


マスクは自分のためより他人のため

 では、なんでマスクをするのでしょう。これはエチケットですね。インフルエンザに感染した人が、くしゃみをすると四方八方に唾と一緒にインフルエンザウイルスが飛散します。それをマスクが防止するのです。

 欧米では、くしゃみはちょっとお行儀が悪い行為で、しっかりハンカチで口を塞ぐという習慣がありますね。そんな習慣が少ない日本ではマスクも感染防止に一役買っていると思いますよ。でもそれは感染している人がマスクを着けるときで、他人に感染させるのを防止しているのであって、自分を感染から守るためではないですね。

 ですから、僕は病院ではマスクはしませんよ。患者さんとの大切なお話がやりにくくなります。僕の顔の表情も患者さんからはわからなくなりますからね。おしゃべりすることも僕の外来業務の大切な要素ですから。


うがいは無効で手洗いは有効?

 うがいと手洗いは少なからず臨床研究があります。うがいは無効で、手洗いは有効という論調の研究が多いかと思います。臨床研究はいろいろなものがあって、すべてが同じ結論になることは少ないのですが、でも大いに参考になります。

 まずうがいに関してのお話です。僕は、うがいはしません。娘は学校の方針に従って、帰宅したときはしています。でも水でさせるだけで、消毒液は使っていません。僕がなんとなく実践していることは、コーヒーを携帯用の魔法瓶に入れて、患者さんとお話しするときは、頻回にちょびちょび飲んでいます。コーヒーがないときは、ペットボトルのお茶です。自分ではこれがいいのではと勝手に思っているのです。消毒液でのうがいは、せっかくのどにいる悪さをしない細菌、つまり善玉菌まで殺しているようで嫌なのです。

 次は手洗いです。こちらも実は僕のイメージはいいかげんなのですが、病院ではしっかり手洗いをするように感染症が専門の先生からの指導を受けています。確かに手洗いをした方が、院内感染のリスクが減るという臨床研究があります。えて逆らう必要もないので、僕も頻回に実践していますよ。

 でも、本当に有効かなと疑うときもあります。いくら手洗いをしても、ドアにノブがあれば、それをみんな触りますよね。つり革もそう、ハンドバッグの持ち手もそう、そしてキーボードも触りますね。なんだかいくら手を洗っても、万人が触るものを介してばい菌は移動しそうですね。病院では自動ドアやフットスイッチで開くドアが多いので、そんな心配は無用ですが、一般社会では、やっぱりみんなが手で触るところは無視できませんね。

 本当に一生懸命するのであれば、いつもアルコールを含んだティッシュを持参して、自分が触ったノブなどを、次の人のためにきれいに消毒するのもすてきですね。でも、握手をした後に、後ろを向いて、アルコールティッシュで手を拭いたのではちょっと幻滅ですね。やっぱり完璧主義は無理ですね。

 いろいろと問題がありそうですが、みんながやっていることに従って病院ではしっかり手洗いをしていますよ。そんなアバウトな僕のお話でした。

 人それぞれが、少しでも幸せになれますように。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

知りたい!_20131107イグ・ノベーベル賞 新見正則さん(1)写真01

新見正則(にいみ まさのり)

 帝京大医学部准教授

 1959年、京都生まれ。85年、慶応義塾大医学部卒業。93年から英国オックスフォード大に留学し、98年から帝京大医学部外科。専門は血管外科、移植免疫学、東洋医学、スポーツ医学など幅広い。2013年9月に、マウスにオペラ「椿姫」を聴かせると移植した心臓が長持ちする研究でイグ・ノーベル賞受賞。主な著書に「死ぬならボケずにガンがいい」 (新潮社)、「患者必読 医者の僕がやっとわかったこと」 (朝日新聞出版社)、「誰でもぴんぴん生きられる―健康のカギを握る『レジリエンス』とは何か?」 (サンマーク出版)、「西洋医がすすめる漢方」 (新潮選書)など。トライアスロンに挑むスポーツマンでもある。

イグ・ノーベル・ドクター新見正則の日常の一覧を見る

最新記事