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最新医療~夕刊からだ面より

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手術の傷痕…腫れや痛み 放置は禁物

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 手術の傷痕が赤く盛り上がり、痛むことがある。何年も我慢してから受診する患者もいるが、早めに治療した方がきれいになりやすい。手術の前に、どんな傷痕が異常で、治療が必要なのかを知っておきたい。

「順調な回復」と誤解も

 手術の傷痕は、一時的に赤みや腫れが起こることもあるが、順調なら、おおむね半年~1年後には薄く目立たなくなる。だが、傷痕が赤く盛り上がる「肥厚性瘢痕ひこうせいはんこん」や、悪化して傷痕の周囲にまで病変が広がるケロイドになることがある。傷口を塞ぐために作られるコラーゲンの量が過剰になるのが原因だ。

 一度なった人は次の手術でも注意が必要だが、初めての手術前に予測するのは難しい。この体質を持つ人は、熟練した医師が丁寧に縫合しても、傷が小さい内視鏡手術を行っても、異常な傷痕が残ってしまう。

 こうした傷痕で形成外科を受診する患者の6割が、産婦人科での手術だという。下腹部は日常の動作で力がかかり、皮膚や筋肉が引っ張られることが原因だと推測されている。

 治療ではまず、ステロイドの塗り薬や貼り薬、注射薬などを使う。効果がない場合や進行している場合は、患部を切除する。術後に放射線照射を行えば再発を減らせる。

 問題なのは、傷の治りが悪いと思わずに放置して悪化させてしまう患者が後を絶たないことだ。

 日本医大武蔵小杉病院形成外科講師の土佐眞美子さんは、産婦人科で手術をした500人について、1年後の傷痕を確かめた。肥厚性瘢痕やケロイドになっていた127人のうち56人(44%)が、傷痕の状態を「順調」と誤解していた。

 土佐さんは「つらい症状がなくても術後1年たって赤みや盛り上がりがあるなら、主治医に相談してほしい。帝王切開後など定期的に通院していない場合は、形成外科を受診して」と呼びかける。

 神奈川県の女性(43)は、2000年に産後の出血で手術を受け、下腹部の傷が肥厚性瘢痕になった。触れると鋭い痛みが走るため、ファスナーがあるズボンや浅いショーツがはけなくなった。我慢していたが、同僚からの情報で形成外科を受診、1年半ほどの薬物療法でようやく改善した。

 04年3月、日本医大武蔵小杉病院で帝王切開で出産。この時は事前に形成外科医に相談し、抜糸直後から傷の治りを良くするシリコーンの特殊なシートをはった。赤みや腫れは起こらず、目立たない傷になった。「最初の手術の執刀医からは、傷に関する説明はあまりなかった」と振り返る。

 同病院は06年から、産婦人科手術を受けた女性は入院中に形成外科医の診察を受ける体制を整えた。模型を使い、正常な傷痕と異常な傷痕の違いを理解してもらう。術後1か月にも受診してもらい、傷痕を〈1〉赤みがある〈2〉硬い〈3〉隆起がある――の3項目で評価する。

 480人の経過を1年間追ったところ、異常な傷痕になったのは、いずれの項目にも該当しなければ5%だが、すべて該当すると50%にもなったという。

 現在は、術後1か月の状態に応じ、〈1〉様子を見る〈2〉貼り薬による治療〈3〉より専門的な治療――など対応を分け、異常な傷痕を予防する取り組みを進めている。(中島久美子)

 
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