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いい湯で健康 温泉と自然療法

yomiDr.記事アーカイブ

治療に使える「療養泉」…健康保険適応が困難な理由

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 まず前回の答えから。海には海底火山もあり、海水はしょっぱいので食塩泉、ということはありません。温泉法には「地中からゆう出する…」と明記されていますので、海水は温泉にはあたらないのです。しかし、海洋深層水を利用したプール等が健康づくりに活用されているところもあり、実験では、塩分濃度が濃くなると体温の上昇が高まる結果が示されています。温泉のような効果があるのです。

温泉法の規定なし

 鉱泉分析法指針には「鉱泉のうち、特に治療の目的に供しうるものを療養泉とし…」と記載されており、具体的な数値が表に示されています。つまり、療養泉は温泉法で規定されているわけではないのです。この法律的な裏付けがない、ということも温泉療養の健康保険適応が困難な理由になっているのかもしれません。




 表(療養泉の定義)をご覧ください。温泉との大きな違いは湯船に入浴できる液体(鉱泉)に限る、という点です。水蒸気やガスは療養泉にはなりません。さらによく見てみると、療養泉の定義1、2は温泉の定義と全く同じです。特殊成分では水素イオン濃度が温泉の条件と同じですが、二酸化炭素・鉄・イオウ・ラジウムの総量は温泉のそれより多くなっています。さらには温泉の定義には含まれていない、銅やアルミニウムの基準値が記載されています。


「食塩泉」や「重曹泉」は療養泉

 それでは療養泉を分類してみましょう。実は「食塩泉」、「重曹泉」などの泉名がある温泉は療養泉なのです。しかし、これらの味わいのある名称は現在では正式名称として使用されなくなり、それぞれナトリウム塩化物泉、ナトリウム炭酸水素塩泉などと味もそっけもない化学物質名が使用されるようになってきました。

 療養泉は全部で9種類あります。1.塩類泉として(1)塩化物泉、(2)炭酸水素塩泉、(3)硫酸塩泉、2.(4)単純温泉、3.特殊成分を含む温泉として、(5)二酸化炭素泉、(6)鉄泉、(7)酸性泉、(8)硫黄泉、(9)放射能泉、になります。泉質ごとの特徴は次回に説明を譲りますが、日本温泉気候物理医学会では、環境省の委託を受けて、学問的根拠を元に温泉の適応・禁忌症の見直しを行いました。その報告を受けて環境省は新しい適応・禁忌症(案)をHPに掲載して広く意見を募集しました。ですから、次回に述べる泉質ごとの特徴は間違ってはいないけれども、ひょっとすると秋ごろには、泉質ごとに特徴的な適応症が変わっている可能性があります。

 さてここまでお話ししてきて、温泉の定義に当てはまっていても、○○泉と泉質名がつかない、かわいそうな温泉があることに気がつきましたか? それは水温が25度未満で、1キロ・グラム中のガス成分を除いた総溶存物質量が1グラム未満であり、成分含有量が温泉の定義には当てはまるけれども、療養泉の定義は満たさない温泉ということになります。このような温泉には当然、適応症の掲示はありません。

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いい湯で健康 温泉と自然療法_大塚吉則_顔120px

大塚吉則(おおつか よしのり)

北海道大大学院教育学研究院教授

 

1955年、北海道生まれ。79年、北海道大医学部卒、第1内科に入局。89年から米ニューヨーク市のコーネル医科大に留学。北海道大病院登別分院・医学部附属温泉治療研究施設(温研)勤務などを経て2007年から現職。国際温泉気候医学会(ISMH)アジア・オセアニア地区代表、日本温泉気候物理医学会理事長、日本生気象学会幹事、NPO健康保養ネットワーク理事長。主な著書に「新版温泉療法 温泉と自然が生み出す健康づくり」(Crews)、「そもそも、すべてが『体質』のせいなのか? 自然治癒力を引き出し幸せになる方法」(Medical Tribune)など。

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1件 のコメント

ラドン温泉についての質問

元気くん

ラドンのガスが、地下の土壌から吐き出され、その上に家がある場合、ラドンガスが家の中にまで入り、知らぬ間に肺がんのリスクに侵されているということを...

ラドンのガスが、地下の土壌から吐き出され、その上に家がある場合、ラドンガスが家の中にまで入り、
知らぬ間に肺がんのリスクに侵されているということを、ある記事で読んだことがあります。
ラドンガスが、肺のがんになりえるというのに、なぜラドン温泉は体にいいのか、以前から不思議でした。
ラドンの量が異なるのか、それともラドンでも種類が違うものなのでしょうか?
教えていただけたら嬉しいです。

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