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介護施設以外の安らぎ提供…認知症カフェ 広がる気配

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患者や家族 公共の場に

アドバイスを受けながら、ひな人形作りを楽しむ参加者(岩手県奥州市の「思い出カフェ」で)

 国内で約460万人と推定されている認知症患者。患者や家族、医療・介護の専門職などが集う「認知症カフェ」が広がりつつある。地域住民が認知症と身近に向き合える場として期待されている。

 岩手県奥州市のJR水沢駅から徒歩約10分の場所にある市の集会所で2月下旬、「思い出カフェ」が開かれ、60~80歳代の8人が集まった。

 集会所は、かつて開業医が所有していた木造家屋。床の間や飾り障子、古い調度品などがそろう座敷で、自由に語り合い、お菓子作り、体を動かすミニゲームなども楽しむ。認知症の人、介護の不安や悩みを打ち明けあう人もいるが、一見しても区別できないほど溶け込んでいる。

 千代紙でのひな人形作りを楽しんでいた女性(85)が参加したのは3回目。同じ物を買ったり、一日にご飯を何度も炊いたりすることもあるが、介護認定は受けていない。独り暮らしで閉じこもりがちになり、在宅介護支援員の紹介でカフェに足を運ぶようになった。女性は「気楽におしゃべりできるのが、本当に楽しみ」と目を細める。

 カフェは、市の地域包括支援センターへの相談者などに参加を呼びかけ、昨年8月から月1回、開いている。センター職員や市の講習を修了したボランティアが運営を支え、介護者などの相談を受けることもある。

 センター次長の及川明美さんは「本人や家族が、自宅や介護施設以外でも、心や体を休息できる場所にしたい」と話す。

 認知症カフェは、厚生労働省が2012年に公表した認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)でも、普及を推進する方針が出された。「認知症の人と家族の会」の13年3月の調査報告書によると、カフェは12年以降急増している。ただ、報告書に関わった京都大大学院医学研究科助教の鈴木和代さんによると、飲食店がカフェを企画したところ一般客が減り閉店に追い込まれた事例もあれば、周囲に知られまいと遠方から数時間かけて通う人もいる。

 鈴木さんは「『認知症』を掲げるカフェはほとんどない。偏見が依然として根強いためだ」と指摘する。

 だが、カフェは、こうした壁を乗り越える可能性も期待されている。

 川崎市宮前区の土橋公民館で、町内会が月1回開く「土橋カフェ」は、認知症の人や家族、地域住民だけでなく、見学者など誰もが自由に出入りできる。

 運営に関わる大倉山記念病院(横浜市)の物忘れ外来部長の高橋正彦さんによると、認知症の人は、社会との接点を失うと精神状態が極めて不安定になり、問題行動を悪化させる恐れがある。カフェは、社会や地域とのつながりを取り戻す場としても重要という。

 土橋カフェでは、認知症の人が抹茶をたてたり、ウエートレスとして注文をとったりする姿も目にできる。

 高橋さんは「公共の場で役割を果たす認知症の人に接することで、ネガティブな印象を改めるきっかけになるはずだ」と話す。(野村昌玄)

認知症カフェ
 運営主体は、自治体やNPO(non- profit organization)法人、高齢者施設など様々で、多くが茶菓子代として数百円の参加費を定めている。本人や家族、地域住民の居場所、情報交換や相談などの場として注目されている。
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