文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

宋美玄のママライフ実況中継

医療・健康・介護のコラム

イヤイヤ期…「目からウロコ」の対処法

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
熱が出てるのに活発な娘です

 先週から家族が相次いで風邪と発熱で倒れています。代わりがいないので無理して仕事に出ていたら、ある朝、高熱で起き上がれなくなり、お休みしてしまいました。娘は私が回復したころに熱を出して、今シーズン初めて保育園をお休みしています。私がこのような体調になるのは研修医1年目のインフルエンザ罹患りかん以来で、頭痛やふらつきが長引いて頭があまり働きません。14日の金曜日には「出生前診断のその国際動向」というシンポジウムで勉強してこちらで報告する予定だったのですが、残念ながら出席出来ませんでした。頭が慢性的にズキズキしてぼーっとするのであまりちゃんとした記事が書けそうにないのですが、最近読んだ育児の本をご紹介したいと思います。

 娘は2歳2ヶ月で、イヤイヤ期真っ最中です。イヤイヤ期があること自体は正常発達の一環なので安心しているのですが、毎日毎日、何をするのも嫌がって、食事を作ったりお風呂に入ったり保育園を往復したりができないので、とても困っていました。ものの本には、イヤイヤ期対処法として「2択にして自分で選んだ方をさせる」「気をそらす」「取引する」などが書かれていますが、どれ一つ、我が強い娘に有効なものはありませんでした。

 いろんな方からアドバイスをもらって、着替えも食事も絶対にしようとせず、なんとかやり過ごしていたところ、仲のいい編集者から児童精神科医の佐々木正美先生の「どうか忘れないでください、子どものことを。」(ポプラ社刊)という本が送られてきました。佐々木正美先生といえば大ベストセラーの「子どもへのまなざし」で有名ですが、同書を読んで私も育児の方向性に自信が持てたので、送られて来た本もすぐに読みました。

 すると、娘とのやりとりで疲れていた私にはいろいろと衝撃的なことが書かれていました。「お母さんは、子どもが喜ぶことをしてあげるだけでいい」「子どもが喜ぶことを親が喜ぶことで『喜びを分かち合う力』が育つ」「喜びを分かち合う力が育つと子どもはやがてお母さんの悲しみも理解出来るようになる」ということです。そうすれば、「いけないことをすればお母さんが悲しむ」のように「怒り」でなく「悲しみ」を理解出来るようになり、しつけもすんなりいくということなのです。

 それまで、どうすれば娘に人間として最低限のことを身につけさせられるか、際限のない要求をどうすればかわせるかということを考えていたのですが、喜ばせればいいというのはある意味、親も楽でありがたいです。アンパンマンやバンビのDVDも「だめ」「あほになるよ」と言って大泣きされていたのを、「よしよし見たいんだね」と言って「親に要求をきいてもらえた」と実感させつつ、すごいスピードでスキップしながら見せるようにした方が、ご機嫌でコミュニケーションもスムーズになりました。

 佐々木先生によれば、「親にしてほしいことをしてもらえた」ということを実感させれば、要求がエスカレートしてわがままになったりはしないものだそうです。まあ多少は個人の資質もあるので多少わがままになるかもしれませんが、自分の親にすら大事にしてもらえたという実感がなかったり、どうせ期待に応えてもらえないだろうと初めからあきらめるようになったりするよりは、今の時期に喜ぶことをしてあげる方が、いいと思いました。

 そんな訳で家族中体調が悪いのですが、熱が出ている娘を喜ばせるためにあの手この手で頑張っています。夜の添い乳がなければもう少し早く体調が改善しそうなのですが、それだけは無理そうです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

son_n_400

宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

宋美玄のママライフ実況中継の一覧を見る

4件 のコメント

コメントを書く

私も佐々木先生のファンです

はい

「こどもへのまなざし」は私のバイブルです。しかし、独立心旺盛な我が子には、ときどきものすごく手を焼いています。「親業」という本が気になるので、取...

「こどもへのまなざし」は私のバイブルです。

しかし、独立心旺盛な我が子には、ときどきものすごく手を焼いています。「親業」という本が気になるので、取り寄せてみようかと思っている所です。

つづきを読む

違反報告

教科書になればいい。

NMS

私も、佐々木正美先生の本は育児の基本となっていて、いまや人生の指針といっても過言ではない存在です。宋先生も読んでいらっしゃると知って、嬉しくなり...

私も、佐々木正美先生の本は育児の基本となっていて、いまや人生の指針といっても過言ではない存在です。
宋先生も読んでいらっしゃると知って、嬉しくなりました。

今、3人目子育て中で、上の小学生たちはイヤイヤ期も過ぎて、もう1人で身の回りのことができるので、ちょっとおざなりになっていたなぁと思い出しました。
佐々木先生の本を読んで、子どもの心を満たすことを最優先に、心穏やかに育児してきたことを忘れて、上の子たちは後回しになっていたかも。
また佐々木先生の本を読み直そう、と思いました。

佐々木先生の本が教科書になれば、「しつけしなきゃ」「ちゃんとした子に育てなきゃ」とプレッシャーを感じながら孤独に子育てしているお母さんたちがかなり救われるのになぁ、と思います。


つづきを読む

違反報告

プレイヤイヤ期の娘相手に…

なじゅん

1歳4カ月の娘を持つ卒後5年目女医です。いつも初めの娘さんの報告から興味深いお話まで楽しく読ませていただいています。うちの娘は「いいこいいこ」と...

1歳4カ月の娘を持つ卒後5年目女医です。
いつも初めの娘さんの報告から興味深いお話まで楽しく読ませていただいています。
うちの娘は「いいこいいこ」と頭をなでてあげると恍惚の表情と歓喜の声をあげるので、ほめてあげるときにいつも頭をなでています。
先日、何かの折に娘が癇癪を起し、本の1ページを破ってしまったときに、その場で「だめ」と声をかけたものの私自身も大きな声を出してしまったことに後ろめたい気持ちもあり、少し暗い顔をしていたんだと思います。ふいに娘が寄って来て、私の頭をなでてくれました。涙が出そうなほどうれしくて…まだ本当の意味での共感は難しいでしょうが、自分の好きなことを他人にしてあげる、悲しみに寄り添うというのはとても素敵なことだと思いました。
私も佐々木正美先生の本を読んでみたいと思います。
お忙しいでしょうが、お体、お大事に。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事