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[清水アキラさん]「卒婚期間」一人を満喫

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囲炉裏に炭を足して暖をとる。「今は外が寒いから、暖かなハワイの絵を描いてます」(長野県山ノ内町で)

 1年ほど前から、故郷の長野県山ノ内町にある実家に頻繁に戻り、一人で暮らし始めた。好きな時間に絵を描いては、自分で作ったカレーを食べ、家のリフォーム計画を練る。

 周囲は温泉街なので、自宅にも湯を引いており、日に何度も風呂に入る。「家にこもってさ、そんな風に過ごすのが好きなんだよ」

 東京都内のマンションに住む妻(58)とは毎日電話をする。「今日は何してたの?」と、たわいない会話をするだけだが、心地よく、安らげる。

 長野で過ごすのは、今は月の3分の1ほどだが、夫婦別々の時間を徐々に増やしている。ブログでは昨年秋、〈結婚生活卒業……卒婚〉と書いた。

 ものまねタレントとして、セロハンテープで鼻や目の形を変えて有名人に顔を似せる芸風で笑いを集め、人気者になった。デビューから40年。暮らしを変えようと決めたきっかけは、3人の息子の独立。6人で暮らしていた都内の8LDKの一軒家は、妻と妻の母親と自分の3人だけとなり、「こんな広い家はいらないと思うようになった」。維持費も高額だ。息子たちに継ぐ意思がないことを確認し、住み替えを決めた。

 還暦が近づいて「体力的に自由がきくのは、この10年か」と考えた時、3年前に母が亡くなってから誰も住んでいない実家のことを思い出した。度々通って、間取りを変え、囲炉裏や露天風呂を作るうち、住みたくなった。ところが、決心を伝えると、「女房は『私はイヤだ』って」。

 結婚して30年以上、妻は育児や家事に励み、自分を支えてくれた。地方の仕事に1年間、ついてきてくれたこともあった。夫婦が一緒にいることは当たり前だったが、顧みると、妻が自分に合わせてくれていたと気付いた。妻は東京出身で、母親も友人も東京にいる。「自分が好き勝手するんだから、女房も好きなように」と単身で移ることにした。「離れて、やっと妻業を休めるようになったみたい」。妻は友人とゴルフに出かけるなど生活を楽しんでいる。

 この数年は、三男・良太郎さん(25)との親子共演も増えたが、仕事に対する考えも変わった。「『やりきった』ではないけど、『やりたいことはできた』と思えた」。ペースを落とし、昨年末には、長く出演したものまね番組を卒業した。

 愛着ある家や出演番組を手放したが、感慨にふける様子はない。「明日は部屋の床を張り替えようと考えるだけで、うれしくて、夜も眠れない」。自分の時間を楽しむアイデアが、次から次へとわいてくる。

 取材中、「女房は、世の中で一番好きな人。自分も、女房の一番好きな人になれるよう努力する」「彼女の喜ぶ顔を見たい」と、まるで新婚のように、妻への愛情を度々言葉にした。

 実は、「人生の目標は、飽きるまで女房といること」。70代は、再び妻と暮らしたいという。卒婚期間は、その目標に向けた、夫婦の休み時間だ。(大石由佳子)

 しみず・あきら タレント。1954年、長野県生まれ。74年にデビュー、お笑いグループ「ザ・ハンダース」で活動。解散後の87年、テレビのものまね番組で優勝。「ものまね四天王」の一人として、多くのテレビや舞台に出演。

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