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孤立の被災者 地域につなぐ

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大阪府社協、岩手へ専門家派遣

大阪府社協から鵜住居地区の仮設団地に派遣された2人は、住民の訪問も行う(左の2人)(岩手県釜石市で)

 東日本大震災で被災した岩手県釜石市で、大阪府社会福祉協議会から派遣された「コミュニティー・ソーシャルワーカー」が活躍している。

 従来の地域や家族の支え合いが壊れた町で、困窮する住民を適切な支援につなぐ役割が注目されている。

 釜石市の沿岸部にあった鵜住居(うのすまい)地区の中心部は、津波で流され壊滅的な被害を受けた。その南西の山あいに作られた六つの仮設団地に、今も約400人が暮らす。

 昨年の暮れ、この仮設で一人で暮らしている男性が、自宅で倒れているのが見つかった。男性は、震災で家族を亡くし、寂しさから持病が悪化していたとみられる。

 男性を発見したのは、6団地の住民を支援する「鵜住居地区サポートセンター」の職員と、大阪から応援に来ていたコミュニティー・ソーシャルワーカーの森川仁文(ひとふみ)さん(38)だった。

 震災から3年。被災地では、生活が激変して自宅に引きこもったり、不眠症や依存症になったりするケースが広がる。この男性も、持病の悪化などが心配されたため、センターから安否確認に訪れていた。

 かつての地縁や血縁の支え合いが壊れた地域では、単身や核家族で暮らす人が増え、孤立が起きやすくなっている。だが、従来の福祉制度は本人の利用申請が基本となっており、自ら手を挙げなければ支援の網からこぼれてしまう。

 森川さんは大阪府内の老人施設に勤める介護福祉士で、困窮者を支援する力量を備えたコミュニティー・ソーシャルワーカーとして府社協が養成した一人だ。センターには昨年12月に約2週間派遣された。「狭くて音も漏れやすい仮設の生活が3年も続き、住民の皆さんは疲れている。自宅にこもる人が目立ち、支援側から出かけていく支援が大切と感じた」と振り返る。

 被災地では、道路や施設などハードの再建が進む一方、福祉的な支援や人材の確保が課題となっている。

 同センターは、被災して休止した市内の養護老人ホームの職員が主に活動を担ってきたが、昨年11月に老人ホームが再建されて職員の多くはそちらに復帰。人手不足に陥ったセンターが全国社会福祉法人経営者協議会に応援を求め、大阪府社協に白羽の矢が立った。

 被災者には近隣や家族の支えを失った人も多く、生活再建に様々な福祉的サポートが求められている。府社協が培ってきた困窮者支援活動の経験が力になると考えられたためだ。

 コミュニティー・ソーシャルワーカーの派遣は12月から始まり、2人ずつ交代で3月末まで続く予定だ。 府社協老人施設部会の奥田益弘副会長は「困窮すると自分の課題が何かわからず、相談すらできなくなる人もいる。社会制度に精通し経験も積んだコミュニティー・ソーシャルワーカーなら、住民の課題を整理する力になれる」と話す。

 実際、同センターで採用されたばかりの職員は「被災者の生活にどこまで踏み込むか」「自立を後押しする支援と、かえって自立を阻んでしまう支援との区別が難しい」と戸惑う。石田正子所長は「被災者に拒まれたら、我々は話を聞くことも困難になる。職員の能力向上は急務」と言う。

 2月、同センターは「対人援助の基本」をテーマに職員研修を行った。

 講師を務めた大分大学の衣笠一茂教授は、「最も深刻な問題は孤独や孤立だ。課題を抱えた人を地域社会と結びつけ、自立を支えるコミュニティー・ソーシャルワーカーの役割が求められている」と話す。(石原毅人)

 コミュニティー・ソーシャルワーカー 問題を抱えた人に、地域のつながりや人間関係を重視した支援を行う専門家。行政や民間団体と連携して問題解決を図るほか、地域の支え合いの活動を後押しする。

 大阪府社会福祉協議会は2004年度から「生活困窮者レスキュー事業」を手がけ、老人福祉施設の職員からコミュニティー・ソーシャルワーカーをこれまでに約800人養成。3万件以上の相談支援にあたってきた。

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