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自由化50周年…海外旅行 シニアが主役
渡航先・スタイル多様化
1964年4月に観光目的の海外渡航が自由化されてから今春、50周年を迎える。日本の経済成長や大型旅客機による輸送力向上を背景に、半世紀で海外旅行客は大幅に増えた。
最近はシニア層の旅行意欲が高まり、目的や渡航先も多様化している。一方、円安傾向や消費増税で、今後も海外旅行客が順調に増えてゆくかどうかは不透明だ。
渡航先・スタイル多様化
欧米やハワイなど定番の観光地に加え、近年はこれまで旅行で訪れるのが難しかったアフリカや中南米などの「秘境」に向かうツアーが人気を集めている。
近畿日本ツーリストやJTB、ANAセールスなど各社は、北極、南極といった極地や南米・アマゾン川流域などのツアーを取りそろえる。近ツーは「昨年の南米行きツアーの参加者は2年前より1割増」という。
旅行の主役は、時間とお金に余裕のあるシニア層だ。日本旅行業協会(JATA)によると、年間の海外旅行者のうち、60歳代以上が占める割合は、2007年の17・4%から12年は19・5%に上昇した。一人旅や夫婦での旅行、さらに子供や孫を連れた3世代での旅行などスタイルも多様化し、今後もシニアの需要は堅調に増えると見込まれる。
13年の海外旅行者は1747万2748人と、12年から5・5%落ち込んだ。昨年から続いている円安基調が影響しているとみられる。4月の消費税率引き上げ後は、旅行の支出を控える動きも懸念される。需要の掘り起こしを狙い、旅行業界は一人でも参加可能なツアーを用意するなど、旅行者の要望に細かく対応する商品を工夫している。
70年代以降円高で急増
1964年以前は、ビジネスや留学目的の渡航以外は、旅券(パスポート)が発行されなかった。JATAによると、自由化当初、7泊9日のハワイ行きツアーの価格は36万4000円。当時の国家公務員の大卒初任給(1万9100円)の実に19倍にあたる高額商品だった。このため旅行者も富裕層が中心で、費用を計画的に積み立てる積立預金も登場した。
70年代以降、国民の所得水準が上がり、為替が変動相場制に移行して円高が進むと、海外旅行者は急増した。「ジャンボ」の愛称で親しまれた米ボーイングの大型機「747」の導入で座席数が増え、渡航費が大幅に低下したことも追い風となった。64年に12万人だった旅行者数は、72年には139万人と100万人を突破。バブル景気に沸いた90年には1000万人の大台に到達した。
2000年代に入ると、01年の米同時テロや03年のイラク戦争、09年の新型インフルエンザの流行など、海外渡航のリスクが意識される度に激しく増減を繰り返した。歴史的な円高が進んだ12年は、64年の約150倍にあたる1849万人と最高だった。(大郷秀爾)
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