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[シカゴから]「ワクチン報道」の副作用

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 風疹ワクチンの接種が徹底されなかったために風疹が流行し、先天性風疹症候群が多発しました。逆に子宮(けい)がん予防ワクチンは実施によって副反応が出ました。その両者に批判が起こっています。

 多くのメディアは、ワクチンの実施により副反応が起こるとたたき、実施せずに感染症被害が出るとたたく。こんな無責任で場当たり主義な記事で根本的な問題は解決されるはずがありません。

 事はこの問題に限りません。脳死判定を危険視し、脳死移植にブレーキをかける一方で、海外で移植を受けた子供が元気に帰国すると美談として報道しました。肺がん治療薬を「夢の新薬」と報道した数か月後に、「悪魔の薬」のようにこきおろしました。しかし、「報道による」副作用の検証は一切ありません。メディアの報道にも科学的な考察が必要なはずです。

 人から人にうつる感染症は、大流行すると被害が多数に及び、社会的影響は大です。したがって、ワクチンで予防可能な感染症は積極的に予防するのが世界の常識です。しかし、わが国では、ワクチンに関連する可能性のある副反応が起こると感情的な報道が先行し、必要性を問う議論さえはばかられる状況が生じてきました。

 残念ながら、ワクチンの副反応がゼロということはありません。大半の人が食べても何の問題もない食品が、ごく一部の人に強いアレルギー反応を起こすように、人間の免疫反応はきわめて個人差が大きく、予測不能です。

 われわれには遺伝的なものを含めてかなりの個人差があるため、人為的ミスがなくても医療現場でのリスクゼロはありえません。この科学的な事実を前提にして、社会的な利益を考慮しつつ、冷静に科学的に議論をしない限り、不幸を減らすことはできません。(シカゴ大教授 中村祐輔)

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