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低所得高齢者の住まい対策

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作図 デザイン課・蟹田純

 低所得の高齢者の住まいとして、空き家を活用することを国が検討しているそうですが、どんな内容ですか。

空き家活用 生活支援も

 所得の低い高齢者は、民間アパートなどに入居するのが難しい。家賃の滞納や孤独死などを警戒して、空き家・空き部屋があっても大家が貸したがらないためだ。独り暮らしだったり、心身の状態が衰えたりして、何らかの支援が必要な場合は、さらに住まいの確保が困難になる。

 高齢化に伴い、都市部を中心に独り暮らしの高齢者が急増。1980年の約88万人が2010年には479万人になった。高齢者人口に占める割合も、この間に8・3%から16・4%へと上昇。しかも、経済的な問題を抱えるケースが多く、独り暮らし高齢者の貧困率は女性で5割、男性で4割に上る。

 一方、総務省の調査(2008年)によると、全国には約757万戸の空き家がある。住宅全体の13・1%に当たる。特に、東京都75万戸、大阪府63万戸など、都市部に大量に存在する。

 こうした状況を受け、国は空き家を活用した低所得高齢者向けの住まい対策に乗り出す。2014年度に全国16か所でモデル事業を始める。

 モデル事業では、地域で介護事業などを手がける社会福祉法人やNPO法人などが拠点となり、空き家の大家に家賃保証をすることで住まいを確保。日常生活に手助けが必要な低所得高齢者を入居させ、見守りや生活支援も行う。この法人は、空き家に入居した人だけでなく、地域の独り暮らし高齢者などに対しても、訪問や生活相談などを実施。支援を受けている人同士が助け合うネットワーク作りも担う。国は、法人職員の人件費を最長3年間補助する。

 空き家を活用して住まいを確保し、生活支援を組み合わせることで、低所得の高齢者が施設などに入らず、地域で暮らし続けられるようになると期待されている。

 こうした取り組みは、すでに東京都内の民間団体などが始めている。都市部の高齢者対策に関する厚生労働省の検討会報告書でも、同様の対策が提言されていた。

 ただ、改修が必要な空き家も多いうえ、戸建てに複数の高齢者が住む場合は一般住宅より高い防火性が求められる。普及には改修費用の調達方法など課題も多い。(針原陽子)

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