文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

これからの人生

yomiDr.記事アーカイブ

[千田正穂さん]心込めた手料理 交流の輪

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
アイスと果物のデザート。「出来合いではなく、ひと手間かけるようにしています」(東京都文京区で)=前田尚紀撮影

 「作るのも食べるのも大好きな料理で招待客に喜んでもらえ、人の輪が広がる。こんな楽しいことはありません」

 2か月に1度ほど、自宅のリビングルームに友人や知人を招き、ホームパーティーを開く。10~20人の招待客は、仕事でかかわった古い友人から歌手まで様々。パーティーで知り合った人同士が、友達づきあいを始めることも多いという。

 自ら台所に立ち、手料理を振る舞う。前菜からメーン料理、デザートまですべてを手作りする。招待する日の半月前から参加者に声をかけ、メニューを考える。参加費は一律1000円。「本当はもらいたくないのですが、タダだと行きにくいという人が多く、あえて会費制にしました」。それでも材料費はかさみ、赤字だというが、「高級レストランに招待するより安上がりだし、他のお客さんに気兼ねせずにすみます」と笑う。

 30年近く前、東京在住のフランス人の催すホームパーティーに招かれたことがある。「どんな豪華な料理なのだろう」と期待して訪ねると、出てきたのは、その家の長男が皮をむいたジャガイモのいため物と、父親手製のローストビーフだけ。質素で驚いたが、終始くつろいだ雰囲気で、大いに盛り上がった。「もてなしで大切なのは、気取らないことと、手作りであることだと知りました」と振り返る。

 その後、自宅を新築した際、1フロアを30畳ほどのリビングにし、16人が食事できるテーブルを設けた。

 外食で気に入った料理があると、作り方を料理人から教わるなどし、技術を身につけたという。ブロックで買った肉の筋を丁寧に取り、下味をなじませるなど、仕込みに丸一日かかることも。「ゲストの笑顔を思い浮かべながら準備すると、苦になりません」

 他人と話をするのが好きで、番組で歌手らとやりとりできる芸能アナウンサーを志望した。当時のNHKは、感情を表に出さずに話すことが当然とされていたが、「若い人が普通にしゃべるような感覚で話したい」と、自分ならではのアナウンス術を探り続けた。

 素人の歌手を集めた歌番組を自ら企画したり、番組告知をアドリブで行って上司から大目玉をくらったりと、型にはまらないことを目指した。

 軽妙な語り口が評価され、「紅白歌合戦」の司会を務めるなど、NHKの看板アナウンサーに。活躍の場をさらに広げようとフリーに転身し、現在、ラジオのレギュラー番組2本を抱える。60代半ばだが、ゲストの若手アイドルと丁々発止のやりとりをするなど、話術は衰え知らずだ。

 「アナウンスの奥義は上手に話すことではなく、上手に聞くこと」。ホームパーティーを取りしきり、参加者を盛り上げるのも同じ要領だという。パーティーには、番組に出演したゲストが顔を出すことも多い。「出演者と番組を離れ、リラックスして話していると、仕事をこれからも続けていきたいという意欲もわいてきます」。交流の輪が大切な宝物だ。(田中左千夫)

 せんだ・まさほ アナウンサー。1949年、東京都生まれ。明治大卒業後、72年にNHK入局。紅白歌合戦の総合司会などを担当。89年からフリーに。現在は「千田正穂のありがとう」(文化放送系)などのパーソナリティーを務める。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

これからの人生の一覧を見る

最新記事